生徒会長 前編 
その1

 

 

 

 

西校舎の4階にある図書室は、放課後とも成ると人気も疎らだ。美咲はランボ

ーの詩集を書架に戻した後に、時計を見て小さく頷く。

(そろそろ、良い時間ね)

口の中で呟いた彼女の耳に、他愛も無い噂話が飛び込んで来た。

『でも、さあ、やっぱり、高杉さんて、冷たい感じがするじゃない? 』

『うん、わかるわかる、やっばり香織もそう思う? 初代の女生徒会長だけの

 事はあって、男を男とも思わない所もあるわよね… 』

『でも、すごく綺麗だし、背も高いし、プロポーションだって抜群なのに、そ

 れでいて頭も良くて、しかも生徒会長だなんて… ぜったいに狡いわよね』

この学校の生徒会長はひとりであり、しかも高杉は自分の名字でもある事から

、美咲は聞くとは無しに、貸し出しカウンターの裏側で交わされる噂を耳にす

る。

『でも、あんなに完璧だと、ぜったいに彼氏なんかいないから、高杉さんは処

 女よね』

『えっ? 剣道部の副主将の吉岡クンがコクったって聞いたけれど? 』

『うそ! ああ、そんなぁ… 吉岡クンは私も狙っていたのに! 』

『それならば、心配はいらないわよ。高杉さん、吉岡クンをあっさりとフッた

 って、もっぱらの評判だから』

『もったいないわよね、吉岡クンて、結構イケてるから、私なら即OKで付き

 合ってみるのに』

『やっぱり、ほら、あんなに頭が良い人だから、自分よりも偏差値の低い男な

 んて、全然興味無いんじゃないの? 』

『そうよね、入学以来、ずっと学年トップだし… でも、あんまり完璧過ぎて

 、近寄り難い存在よね、高杉さんは。1000円掛けても良いけれど、あの

 ひと、絶対に男を知らないわよね』

『うんうん、そんな感じだわ。馬鹿な野郎は寄せつけない雰囲気があるのもね』

『あ〜あ、もったいない。あんなに美人に生まれていたら、私ならそこらのイ

 ケ面をかたっぱしから逆ナンして、ついでに阿呆なオジンには貢がせてやる

 のに』

『もったいない話よね、ほら高杉さんたら、前には好則クンもふっているんだ

 よ! 』

『マジ? 彼のバンドのライブのチケット、取るのも難しいくらいに人気があ

 るのに? それこそ、ウッソ〜 よねぇ… 』

一月程前に自信たっぷりで付き合えと言い寄って来た茶髪のアマチュア・ミュ

ージシャンを、けんもほろろに袖にした時の事を思い出して、美咲は苦笑いを

浮かべた。断られる事など想像だにしていなかった茶髪男は、それ以来、彼女

の事を目の敵にしていて何とも鬱陶しいのだ。

『でも、世の中って不公平よね。なんで高杉さんばかりモテるのよ? 好則ク

 ンまでフルなんて、許せない! アタシなら何時でもOKなのに… 』

『あんた、自分の顔と相談してから、愚痴ることね。悔しいけれど、やっぱり

 美人には勝てないの。おまけに、あんなに頭が良ければ、馬鹿な男なんて相

 手にしないわよ』

『生徒会でも高杉さん、凄いんだってさ。ほら、生徒ホールの自動販売機の数

 が増えたのも、高杉さんの提案が通ったからだそうだもん』

昼休みには長蛇の列が出来たホールの渋滞解消は、概ね生徒な間には好評だっ

た。頭の固い教師を相手に何度も粘り強く掛け合った甲斐があったと、美咲も

満足している。

まだまだ噂話は尽きぬ様だが、当人がカウンターの向こう側に居る事も知らず

に、無限ループ的に無駄話を続ける一団を後にして、美咲は静かに図書室を出

て行った。

放課後の教室は、ほとんどの生徒が既に帰宅している事から静まり返っている

。時折、文化部が使用する教室から華やいだ笑い声が漏れ聞こえる廊下を、彼

女はひとりで足早に進んで行く。高杉美咲は先程図書室で他の女生徒等が噂し

ていた通りの長身の美人で、生徒会長を務める才媛であったから、この学校で

は知らぬ者はいない。

切れ長の印象的な瞳で見つめられると、教師でさえ思わず息を呑む色香を持つ

美女は、桜色の唇に微笑みを称えたまま、人気の無い廊下を静かに、そして足

早に進んで行く。

図書室や職員室が入っている新校舎から渡り廊下を通って、昭和後期に立てら

れた旧校舎に赴き、さらに旧校舎に隣接する生徒会館へと進めば、もう目的地

に向っている美咲は駆け足に成っていた。過去には職員室や、各種授業の準備

室として使われていた2階建ての古い建物は、それらの設備が新築の新校舎に

移された今では生徒会館として使われている。

運動部の活動が盛んな学校であったので、各運動部は自前の立派な部室を持っ

ていた。従って運動場から少し離れた立地の関係もあり、この生徒会館を使っ

ているのは、文字どおり生徒会の執行部だけだった。美咲は午後の遅い時間に

も関わらず、生徒会室として使われている建物の前に辿り着き、用心深く左右

を見回してから、ポケットから取り出した鍵でドアを開く。

築40年とも言われるコンクリート製の建物の中はカビ臭いが、そんな不快な

臭いも、いまの美咲には気に成らない。彼女は誰もいない生徒会室の中を通り

過ぎて、過去には科学準備室に使われていた部屋に入った。さらに、その奥へ

進めば、頑丈な鉄製のドアが彼女の行く手を塞いでいる。

再びポケットから別の鍵を取り出した美咲は、誰も居ないのは承知した上で、

もう一度、さっと左右を見回してから、この重いドアの施錠を解く。古いドア

であるが蝶番には油がちゃんと注してあるので、ドアはゆっくりと静かに開く

扉の向こう側には地下に通じる階段が伸びている。美咲は中に入ると静かにド

アを閉めて、あらためて施錠をすると、更に慎重にドアノブを引いて鍵を掛け

た事を確かめる。ビクともしないドアに満足げに頷いた美女は、古い裸電球が

照らす薄暗い階段を、慣れた様子で掛け降りた。

 

 

「お待たせ、弘人くん」

過去に写真部の暗室として使われていた部屋の扉を開けると、中根弘人は読ん

でいた雑誌から顔を上げて、満面に笑みを浮かべて彼女を出迎える。この地下

室の存在を知っているのは、生徒の中では美咲と弘人だけであろう。生徒会の

運営を任された美咲は、この建物の状況をひとりで入念に調べ上げて、旧科学

準備室の奥の鉄製の扉の奥にある階段と、地下の暗室を見つけていた。

鉄製の扉の鍵は準備室に放置されていたロッカーの中に、予備を含めて3本が

全部ぶら下がっていたし、暗室と階段を仕切る扉の鍵は、用心の為に弘人に付

け替えさせている。

それもこれも、全ては弘人と学校内で逢瀬を繰り広げる為の工夫なのだ。一つ

下で一年生の中根弘人は、これまた絵に描いた様な美少年であり、彼の学年の

女生徒の人気ランキングではトップ3を譲る事はあるまい。美咲が会長を務め

る生徒会で書記を任されている弘人は、読みかけの雑誌を放り出して勇んで立

ち上がると、まるで飼い主に散歩をねだるコーギーのごとく、美咲の元に駆け

寄って来る。天然の茶色の巻き毛が愛らしい少年の事を美咲はしっかりと抱き

締めて、そのまま唇を重ねて行く。頭半分程、彼に比べて長身な美女にしがみ

つき、弘人も目を閉じてキスを堪能する。

「ごめんね、遅くなっちゃって。図書館で調べ物があったから… 」

「いいんです、僕はこうやって会えるだけで幸せですから」

本当は可愛い年下の坊やを焦らすのが目的で、大した用事も無いのに図書室で

グズグズしていた美咲は、作戦が効果的であった事に満足して柔らかな笑みを

漏らす。彼女の手がそっと少年の下腹部に伸ばされると、まるで美咲の愛撫を

期待する様にズボンの前はしっかりと強ばっている。

 

 

 

 

 


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