その16

 

 

 

 

「ひぃぃ… もう、だめぇぇぇ… ああ、ゆるして… もういや… あっ… 

 あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ… 」

その頼り無い悲鳴とは裏腹に、彼女の女陰は巨根の飽く事の無い襲撃に備えて

呆れる程に愛液を滴らせている。牝の淫汁の滑りの力を借りて、規男の律動も

増々スムーズになっている。口では許せだの止めろだのと煩い美女だが、何が

何でもで犯される事から回避しようとする様子は見えない。両手は彼の行動を

阻む事もなくシーツの上に投げ出されている。

(やっぱり、凄い… これ、最高… )

抗議の声が掠れてしまい、やがては哀しげな啜り泣きに変わると、もう真弓子

は朦朧と成り男の成すがままに貪られて行く。背筋に走る電撃の様な快美は彼

女を泣かせるには十分だ。まるで憎しみを込めたみたいに最深部にまで押し入

ってくる巨根の魔力に魅入られた美女は、肌理の細かい白い肌に玉の汗を浮か

べてよがり狂う。

この心地よさを彼に分かってもらいたいと口を開いてみても、漏れ出てくるの

は獣じみた唸り声ばかりだ。こんな経験は初めてだから真弓子は大いに面喰ら

う。これまでそれなりに男の遍歴はあると自負していた美女にとって夢とうつ

つの狭間を行き来させられる異様な行為は驚くばかりである。押し寄せる喜悦

の奔流の勢いは凄まじく、もう己を保っている事などはとうてい不可能だった

。自分の躯に何が起こっているのかさっぱりわからない、関節が軋み肉が蕩け

る強烈な感覚に押し流されて、真弓子は何度も生々しい声を張り上げながら痙

攣を繰り返す。

「ひっ… だめ… あっ… また… あっ… あっ… あひぃぃぃぃぃぃぃ… 」

二度目に絶頂に追い上げられた真弓子は、大きく背筋を逸らせて今際の際の悲

鳴を漏らす。頂点に駆け上がる時の蜜壷の素晴らしい締め付けに耐えかねて、

オタク野郎も心ならずも射精に至った。

「ひぃぃぃぃぃ… 」

肉穴の奥深くへ子種汁を注ぎ込まれる感触を痛烈に感じながら、真弓子は何度

も汗にまみれた裸身を震わせてしまった。

「ふぅぅ… いい女だぜ。我慢が出来なかったよ。でも、派手なイキっぷりだ

 な」

すっかりと素直に成った美女の惚けた顔を見下ろして、ようやく余裕を取り戻

した規男が嘯く。この生意気で傲慢な陵辱者に何か一言でも痛切な台詞をぶつ

けてやりたい真弓子だったが、頭の芯まで痺れる様な快美の余韻にせいで、相

手に打撃を与えられる様な罵詈雑言が浮かばない。ただ荒い息のままで恍惚と

した顔を見せる獲物を前にして、オタク野郎の獣心は掻き立てられる。

「まだまだ、これで終わりだなんて思うなよな。たった一回出したくらいじゃ

 、俺はおさまらないんだよ」

信じ難い事であるが、なんと放出に至ったにも関わらず、この野卑なオタク野

郎の一物は硬度をまったく失う事も無く、太々しくも彼女の蜜壷にのさばって

いた。それが再び律動を始めたことから真弓子は心底驚きパニックに陥る。

「あっ… まって、もう… きゃぁぁぁぁぁぁ… だめよ、もういや、やめて

 … やめてぇぇぇぇぇぇ… あぁぁぁぁぁぁぁぁ… 」

甘い余韻からいきなり現実へと引き戻されて、真弓子は本気で男を突き放そう

と両手を彼の胸板に差し伸べる。

「馬鹿を言うなよ! これくらいで満足する俺じゃ無いぜ」

「そんな… ひどいわ… まって、おねがい、もう少し休ませて… じゃない

 と、あっ… だめぇぇぇぇぇ… ゆるしてぇぇぇぇぇ… 」

慌てふためく美女は懸命に両手を突っ張って身を捩り何とか悦楽地獄から逃げ

出そうと試みるが、獣心を燃やすオタク野郎の前では彼女は余りにも無力だ。

しかも、これまでの鮮烈な肉の快楽に惚けた躯にはまったく力が入らない。だ

から、一生懸命に押し戻しているつもりの両手は彼に邪険に振払われてしまっ

た。

「だめよ、まって、おねがい… あっ… そんな… あひぃぃ… 」

逆らおうにも、律動が再開されてしまうとたちまちの内に燠に成り燻っていた

快美の炎が大きく燃え上がり、真弓子はあっさりと桃源郷に追いやられて行く

。再び彼を突き放そうと思っても、もう両手に力が入らない。言葉で制する事

を考えても、呂律も怪しくなっていて明確な拒絶の意志は伝わらない。しかも

都合の悪い事に彼女の気持ちとは裏腹に躯は快美を簡単に受け入れて女陰は増

々愛液で濡れて爛れて行く。

「もう、ゆるしてぇぇぇ… ああ… すごい、躯が、もう、もたない… あっ

 … やめてぇぇぇぇ… きゃぁぁぁぁぁぁぁ… 」

恥知らずな声を張り上げる真弓子だが、なんと彼女の躯は持ち主を裏切り、男

の律動にあわせるように腰は自然とうねくり始めている。

「ぐずぐず言うワリに、ほら、尻がもぞもぞ動いているぜ、別嬪さんよぉ… 」

「ちがうの… あっ… ちがい… あひぃぃぃ… やめて、ああ、もう、だめ

 ぇぇぇ… 頭がヘンに成るぅぅぅぅ… くひぃぃぃぃぃぃぃぃ… 」

すっかりと男を悦ばせる為の肉人形と化した美女は、甘えた泣き声を漏らしつ

つ、結局朝まで数え切れない位に何度も絶頂に追い上げられてしまった。

 

 

 

「う〜ん… 」

ようやく目をさました真弓子は、まだ躯が痺れている様な錯覚の中で何度か頭

を振ってから静かに身を起こす。ぴったり寝室の窓を覆った遮光カーテンのせ

いでベッドルームは薄暗らく、今が何時頃なのかさっぱりと分からない美女は

サイドテーブルの時計を持ち上げて時間を確認する。

「うふふ… 随分と寝坊をしたものね。もうお昼過ぎじゃないの」

時計を元の位置へと戻してから、彼女はおもむろにベッドを降りて立ち上がる。

「う〜〜〜〜ん… はぁぁぁぁぁ… 」

昨夜の荒々しい性行為の余韻は、しっかりと根深く躯に刻み込まれているよう

だ。こうしてたっぷりと睡眠を取ってみても、まだ脚には力が上手く入らない

し、躯の節々には疲労と鈍痛が堆積されている。今日が休日である事も計算に

折り込んでの挑発であったが、思ったよりも大きな影響が残った事が妙に可笑

しくて、真弓子は薄笑みを浮かべてドレッサーの椅子の上に投げ出してあった

シルクのガウンを取り上げた。

肌触りのよいお気に入りのガウンに袖を通しつつ寝室から出てみれば、やはり

リビングにも陵辱者の姿は見当たらない。おそらく昨夜のうちに専用の出入り

口を使って己の根城に戻ったのであろう。本来であればポットを温めてお茶の

葉から入れるのであるが、心地よい疲労に流された真弓子は来客様に備えてあ

るフォートナム&メイソンのティーパックを使って簡単に紅茶を用意する。

ダイニングにアールグレイの香りが満ちるのを目を細めながら楽しんだ美女は

、素肌の上に直接に着込んだガウンを翻して、ティーカップを手にソファへと

場所を移す。カップの中身が半分程に減ったところで真弓子は思い出した様に

手を延ばすと、ソファの上に置いてあったハンドバックから携帯電話を取り出

した。

「あっ… 哲也さん、いま、ちょっといいかしら? ええ、たいした話じゃな

 いから、すぐに済むわよ。あのね、唐突だけれど別れましょう… えっ?

 なに? いいえ、冗談なんかじゃ無いわよ」

隣の小太りのオタク野郎と情熱的な一夜を過ごした美女の心には、もう昨日ま

での恋人が居続けるスペースは残されてはいない。今と成っては何の未練も感

じない男からの詰問や哀願は、真弓子の心を数ミリたりとも揺さぶる事はなか

った。

「そんなに大騒ぎしないでちょうだい、別れるのはあなたと同じ理由なんだか

 ら。ほら、哲也さんも私と付き合う為に経理の岩見和子さんや総務の吉岡幸

 子さん、それに同じスポーツ・ジムで知り合った岡島… えっと… 名前は

 忘れちゃった… さん等と手を切ったでしょう? もっとも、総務の吉岡さ

 んとは中々縁が切れなくて、つい先月までずるずると付き合いを続けていた

 みたいだけれども… 」

迂闊にも会社の同僚の女性との二股を掛けていた哲也は、その事実が真弓子に

筒抜けだった事に驚愕している様子だ。こんな話は嫌でも向こうの女性から彼

女の耳に届けられていた。これまでは彼が他の女にもてるのも魅力の内と気に

もとめて来なかった真弓子だが、別れるには良い口実に成る。数秒間の絶句の

後で元の恋人の地位に転落しつつある男は懸命に弁解を始めた。

「あなたの言い分は聞きました。しかし、私の気持ちは変わりません。えっ…

 理由? 理由を聞かせろですって? いいのかしら? そう、そんなに聞き

 たいなら教えるけれど… あなたよりも良い男を見つけたの。そうよ、極上

 の男… もう、彼無しでは生きて行けそうにないのよ。だからあなたとはお

 終いにするの。分かったかしら? それじゃ、サヨナラ… 」

まだ何ごとか言い募る哲也を他所に、彼女は携帯を切ると電源まで落してしま

う。

(ちょっと可哀想だったかしら? でも、あなたじゃ、もう駄目なのよね… )

昨夜の熱狂を思い出しながら、真弓子は虚ろな瞳で陶然と笑みを浮かべていた。

 

 

秘書室の女 END

 

 

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