その16

 

 

 

 

『笑うだなんて、とんでも無いですよ。年こそ若いが笹川さんが、あの昭和最

 後の縛師の後継者である事は、今日までの手際を見れば誰もが納得しますか

 らね。私も、こんなに短期間に牧子が縄に馴染み、あんな痴態を曝してくれ

 る様に成るとは思ってもいませんでした』

叔父は一気にまくしたてると、ひつと大きく息を吸い込む。

『以前にお話した通り、私はここ数年、まったくの不能に陥っています。いく

 つもの病院を訪ねあるき勃起不全の治療に打ち込みましたが、効果は芳しく

 ありません。そんな中で私は言わば妄執に取り付かれてしまいました。医学

 的な治療に加えて数多くの民間伝承にまで縋りながら、徐々に私の胸中では

 妻に対する複雑な感情が芽生えて育って行ったのです。もしかしたら、男と

 して役立たなくなった私は牧子に捨てられるのではないか? 私の目を盗ん

 で、他の男に抱かれているのでは無いか? と、言う妄想は膨らむ一方だっ

 たのです』

叔父が男性能力の欠乏に悩んでいた事実を知り、孝昌は驚いた。

『私は牧子を愛していますが、彼女を満足させる事が出来ません。そうしてい

 る間にも妻が他の男にうつつをぬかす様に成らないかと思うと、もう気が狂

 いそうでした。そんなある日に、悪魔の囁きが聞こえたのです。誰か見知ら

 ぬ輩に取られるのであれば、先手を打って私に縛り付けておけば良い。私の

 傍らから逃げだせない様に仕込めば良い、と思い付いてしまいました。あと

 の事は御存じの通りです』

叔父の言葉を聞いて、若者は相槌をうつ。

『はい、師匠からはなるべく短い期間で、徹底的に堕とす様に言い付けられて

 来ました。だから、敢えてここでもう一度確かめておきたいのです。今がギ

 リギリの所なんです。ここを越したら、もう奥さんは二度と昔の牧子さんに

 は戻れません。あとは手掛かりの無い崖を転げ落ちる様に、性の暗黒面に取

 り込まれてしまいます。俺はこれまでに何度か、そう言う女を見て来ました』

年に似合わず分別のある台詞を口にする若者の言葉には真実の響きが感じられ

る。しかし、亡き叔父は決意を変えるつもりは無かった。

『かまいません、たとえ目の前に破滅が待っていたとしても、私は妻が… 牧

 子があなたがたの手により辱められ、淫婦に変わって行く姿に魂を奪われて

 しまいました。今では自分が勃起不全に陥った事すら、この悦びを得る為の

 やもうえぬ犠牲だったと感じているくらいです。もしも健全に夫婦生活を営

 んでいたならば、おそらくこの様な興奮を知ることは無かったでしょう。だ

 から、最初のお願い通りに、とことんまで突っ走って下さい。どんな結果に

 成ろうとも、けして後悔する事はありませんよ。おや… ? 』

そこまで亡き叔父の決意を聞いた次の瞬間、録画停止を忘れていた事に気付い

たのか? 不意に画面が暗転した。同時に音声も途絶えたので、孝昌は真っ暗

な画面を見つめながら、大きく深い溜息を漏らした。

 

 

夕方近くに、ついに我慢が出来なく成り、孝昌は愛車を再び叔母の暮らす家に

走らせた。あらかじめ電話で来訪は告げていたが、その動機までは語る事の無

かった孝昌は、手土産の花束を右手に持ち、少し緊張した面持ちで叔母の家の

扉の前に立つと、呼び鈴を押す前に10秒間ほど逡巡した。

(会って、いったい何を話すつもりなんだ? 俺は何をしたいんだ? )

今は亡き叔父から託された、あれらの写真やDVDの画像を受け取った若者は

、まだ自分の気持ちに整理が付かぬまま、躊躇いがちに呼び鈴を押す。耳障り

な電子音の後に、まるで来訪を待ちかねていた様に施錠が解かれる音が響き、

扉は中から開かれた。

「いらっしゃい。待っていたわよ、孝昌くん」

白いブラウスに薄いピンクのカーディガンを羽織った牧子に出迎えられて、孝

昌の方がドギマギしている。

「あら? お花… どうもありがとう。さあ、上がってちょうだい」

彼が持ち込んだ花束を受け取った牧子は、台所に引き込むと花瓶に生けてリビ

ングへと持ち込んで来た。再び台所に戻りお茶の支度を整えて彼女が戻るまで

、孝昌は綺麗に飾られた花を見て気持ちを落ち着かせようと努力する。だが、

若者の苦労はあまり役には立たない。御盆にお茶を乗せて戻って来た牧子は昨

晩の夜とは違い、当然の様に彼の隣に腰を降ろして躯を密着させて来たのだ。

「こうやって、駆け付けてくれと所を見ると、主人の残した遺物を確かめてく

 れたのね?そうでしょう? 孝昌くん」

昨夜とは一転して貞淑な未亡人の仮面を脱ぎ捨てた牧子は、潤んだ瞳で若い甥

を見つめる。

「あっ、その… はい、見ました」

ここまで来て恍けても始まらないから、彼は素直に認めて頷く。

「あの人は、私に淫らな女に成る事を望んだの。たとえ抱かれることは無くて

 も、私は主人を愛していたわ。でもあの人は… 私も主人が望むならばと、

 忍冬の会に入る事を承諾したのだけれど、いざ体験してしまうと、もう駄目

 ね。自分がどんどんと変わって行く有り様がわかっているのに、どうにも歯

 止めが利かなくて… 」

画面の中で縄をうたれて若者の巨根に貫かれていた美叔母の光景が、ふいに脳

裏に鮮明に浮かび上がる。こうして彼ににじり寄り、太股に手を置き何かを訴

える牧子を見ていて、不意にかれは突き上げられる様な劣情に支配された。

「あっ… 」

小さく呻く美叔母を無理に抱き寄せた孝昌は強引の顔を寄せて唇を重ねて行く

。すると牧子も抗うどころか、若い牡にしがみつき舌を絡めてくるではないか

。彼女の行動に勇気を得た若者は、亡き叔父が暮らしていた部屋で、彼の残し

た妻と濃密なキスを堪能する。

「ふぅ… 」

息が苦しく成り唇を離せば、牧子は瞳を潤ませて彼を見つめている。

「私は、あのビデオや写真の様に、淫らな女に変わってしまったわ。亡くなっ

 た夫が望んだ様に… いいえ、あの人が望んだ以上に私は堕落してしまった

 の。裸に剥かれて縄が肌に喰い込むだけで、あさましい程に濡れる女。たと

 えどんな殿方に抱かれても、たちまちのうちに快楽に溺れて恥知らずな声を

 あげる女。どんな人のオ◯ンポでもしゃぶりついて、口での愛撫ですらイッ

 てしまう、ふしだらな女。そんな風に私を変えておきながら、あの人はいき

 なり事故でこの世から去ってしまったの」

テレビの画面からでは無く、生身の牧子から衝撃的な告白を受けると、さすが

に孝昌の腹も決まる。

「心配はいりませんよ、牧子さん。僕が叔父の遺志を継ぎます」

すがる美叔母を抱き締めながら、孝昌は微笑み御主人様継承の意を告げた。

「ああ… うれしい。あの人が生前に言っていたの。孝昌くんには自分に似た

 臭いがすると… あなたが大学に受かった時の御褒美に、あの人は私を共有

 させると言っていたわ。私を裸に剥いて、ベッドにしばりあげてオマ◯コに

 もお尻の穴にもバイブを突っ込んで、乳首の真っ赤なリボンを付けて、孝昌

 くんに進呈するんだって、それはもう楽しみにしていたの。でも、その夢も

 叶わぬ間に、あの人は事故で逝ってしまった」

亡き叔父の企てていたとんでもない計画を聞かされて孝昌は面喰らう。

「その時の為に、主人は新しいビデオカメラを買っていたわ。私が孝昌くんに

 犯されて恥ずかしい声を上げる様を写して楽しむんだと言って、本当に嬉し

 そうに笑っていたの」

不慮の事故で亡くなった夫を懐かしみ、牧子は束の間、遠い目をする。亡き叔

父に、まだ心を残す彼女の風情に、孝昌は猛烈な嫉妬を感じている。

 

「ところで牧子さん… 」

邂逅に浸る美叔母を現実に引き戻す為に、孝昌は努めて冷静に呼び掛けた。

「忍冬の会とは、もう連絡は取れないのですか? 」

「えっ… 」

虚を突かれた美女は、思わず息を呑む。

「せっかく素晴らしいSMサークルとの出会いがあったのですから、叔父が亡

 くなったからと言って、縁を切ってしまうのは惜しいとおもいますよ。もし

 も、まだ連絡がとれるのであれば、今度は僕と牧子さんで改めて入会を考え

 ましょう」

唐突な孝昌の提案に、しばし驚いた顔をした牧子であったが、あの目眩く様な

被虐奴隷の日々が再び戻ってくる予感に興奮して、躯が震えて来るのを抑えら

れない。

「本当なの? 本当に、私の御主人さまに成って、忍冬の会に入ってくれるの

 ? 嘘だなんて、言わないでね。おねがいよ、孝昌くん… いいえ、御主人

 さま」

自分の睨んだ通りに、牧子が性の暗黒面にどっぷりと漬かり切っている事実を

確認した孝昌は、満足げに頷き邪悪な笑みを浮かべた。

「いいでしょう。牧子さんの持ち主に成り、あなたを再び共同の肉便器として

 扱ってさしあげますよ」

年下の甥の目に、亡き夫と同じ邪な光りを見い出した牧子は、諦めていた闇の

世界への復帰を予感して、魂までも震わせていた。

 

 

黒衣の美叔母 END

 

 

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今回をもちまして、しばらくの間、週間定期更新をお休みにします。

今後は不定期に連載ものや裏の方をアップさせて行く予定ですから、

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