(やっぱり、徹が一番だわ… これ、たまらないもの… ああ、怖いくらいに 感じている… でも… ) 易々と何度も高みに追い上げられてしまった夕子は、ようやく己を取り戻しか けたインターバルの間も、我がもの顔で彼女を貫き続ける剛直に反感を覚える 。 「いつまで… あふぅ… 犯っているのよ? あっ… もう… いい加減に… あぁぁぁぁ… 」 口では逆らってみるものの、やはり彼女は徹の緩やかな律動に合わせて、つい 腰を振って迎え撃ち快楽を貪ってしまう。 「それじゃ、今度は後ろから犯らせて下さいよ、夕子さん」 彼女の細い首筋を舐っていた徹は顔を上げて、微笑みを浮かべたままでそっと 呟き、ゆっくりと身を離す。 「あっ… ふぅぅぅぅ… 」 ようやく自由を取り戻した美女であったが、蜜壷から怒張を失った空虚さに耐 えかねて、慌てて躯を捻りシーツに俯せに身を伏せると、そのまま尻を持ち上 げて獣の体位を自ら取ってしまう。 (この野郎! 好き勝手な事を言いやがって! 後で覚えていらっしゃいよ! さあ、お好みの格好でしょう? さっさと犯りなさい! ) 内心で部下の生意気な男を罵ってはみたが、己がまだ貪欲に快楽を求めている 事に困惑した彼女は、あえて声に出す事は控えながら、白く染みひとつない美 しいヒップを愛人に向って捧げている。だらしない躯に苛立ち、憎まれ口のひ とつも叩こうとした夕子だが、口を開いて出た言葉は、まるで違う代物だ。 「ねえ、入れて… お願い、このまま、後ろから獣みたいに犯って… 」 うっとりとした表情の美女にハスキーな声で誘われた徹は、一も二も無く艶か しいヒップに食らい付く。 「あっ… ああぁ… きゃぁぁぁぁぁぁぁ… 」 正常位から後背位へ移行したことで、剛直の侵入の角度は大いに異なるから、 新しい刺激をモロに受けた夕子は痺れる様な快美の前に崩れ落ちて、そのまま シーツに顔を埋めて咽び泣く。 これまではプライドが邪魔をして、あまり好んで至らなかった獣の体位が生み 出す鮮烈な快感に溺れて、夕子は情けない悲鳴を上げて首を振る。だが、尻は 後ろからしっかりと徹に抱え込まれてしまい、逃げたり避けたりする事は許さ れない。しっかりとシーツを握り締めたままで灼熱の剛直に貫かれた美女は、 とても堪え切れずに恥知らずな甘い悲鳴をまき散らす。 「ひぃぃぃ… すごい… ああ、トオル、これ、最高! あっ… あぁぁぁぁ … お尻が… ひぃ… ひぃ… ひぃぃぃぃ… 」 暴走する悦楽の前に己を見失う美女を責める徹の方にも、2度目の崩壊の時期 が確実に近づいて来る。まろみを帯びた白い双丘の谷間の奥に見隠れする愛液 混じりの肉棒を眺めながら、彼もまた愛しい人との肉の交わりに心を震えさせ ていた。既に先に何度か頂点に達した美女の蜜壷は滾々と愛液を溢れさせて潤 い、出入りする徹の怒張を甘くしっとりと締め上げて来る。 「ひぁぁぁ… イクわ! また、イッちゃう… ねえ、お願い、一緒に! お ねがいよぉぉぉぉ… 」 情慾の限りを貪り尽す徹の突き上げの前に、ついに夕子は性愛の深淵から奈落 の底を覗き込む。清潔なシーツに爪を立てて掻き毟り狂乱を訴える美女の姿に 、もう徹も限界を感じている。最後の追い込みを掛ける愛人の強烈な突き上げ に曝された夕子は、目の前が真っ白に成る桃源郷の入り口で、彼の射精の時を 待つ。 「あっ… あぁぁぁぁぁぁぁ… 」 最初に崩れたのは、やはり夕子の方だった。愛人の突き上げに合わせて揺れて いた尻がわななき、やがては全身に痙攣が広がった美女は、嬌声を張り上げて そのままシーツに突っ伏してしまう。 「くぅ… 夕子… 」 一呼吸遅れて、徹も本能の趣くままに甘い法悦に身を任せて、彼女の中に精を ほとばしらせる。 (ああ… トオル… 最高よ… ) 霞む思考の中で、夕子は愛人が齎した愉悦に浸り、そのまま溺れて意識を失っ た。
旅の疲れもあり、結局は空港の近くのホテルのスイートルームで惰眠を貪って しまった二人は、昼を少し回った時刻に、ようやく職場の桜田門へと辿り着く 。いつものように地下の駐車場に車を滑り込ませた徹は、エレベーターホール の近くで夕子を降ろすと、真っ赤なスポーツカーを少し離れた外事3課別室に あてがわれた駐車スペースへと運んで行く。 黒い覆面車両が並ぶ場所柄には不似合いなV8サウンドを響かせながら車を停 めた徹が、窮屈なコクピットから這い出した時に、柱の影から一人の中年男が ふらりと姿を現す。 「昼を回ってから、フェラーリで本庁に御出勤とはな。随分と気侭に振る舞っ ているじゃないか? 岸田徹巡査殿」 いきなり現れた亀谷から投げ掛けられた皮肉な台詞に、徹は思わず懐かしさに 包まれた。以前であれば、事情を知らぬ職員達に謂れの無い誹謗中傷を受ける 事など珍しくも無かったが、ようやく相応しい相棒を得た「夕子台風」が縦横 無尽に暴れ回った後である今日では、誰も面と向って徹に対して当て擦る様な 台詞を吐く事も無くなっている。だれだって好きで信管のセットされた地雷を 小突き回したりはしないものだ。 「あの、失礼ですが、どちら様でしょうか? 」 あくまで謙虚さを失わぬ巡査の問いかけに、強面の亀谷はジロリとひと睨みを くれる。臑に傷もつ連中であれば彼の鋭い視線に怯み、大抵の連中は目を逸ら すところだが、徹は微笑を浮かべたままで佇んでいるのだ。 「大阪府警察の警務課から、わざわざ呼び寄せられた亀谷だ。警務課と聞けば 一つか二つは思い当たる節もあるんじゃないか? どうだ岸田巡査? 」 1つ2つどころか、両手両足の指を動員しても足りない数の思い当たる節を考 えると、徹は曖昧な笑顔を浮かべるより他に手立てが無い。 「ここ数年の一連の騒動の黒幕がお前だって事は、こうして面通しをしてハッ キリと分かったぜ。アメリカから来た捜査官をまんまと篭絡して、すき放題 に馬鹿騒ぎをした挙げ句に、最近では治外法権を得たと勘違いしていやがる 様じゃないか? 勝手気侭に休暇を取るわ、いきなりヤクザ相手に市街戦に 及ぶわ、ふっつりと長期間に渡って行方不明に成るわ… たかが巡査のくせ しやがって、いったい何様のつもりだ? 」 とんでもない誤解をしている警務課の警官の言葉に、徹は心の中で小さく溜息 を漏らす。
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