その11

 

 

 

 

実は中々の酒豪である加奈子だから、たかがグラス1杯のワインを持て余す事

など、いつもであればありえない。しかし、あの衝撃的なビデオを見てしまっ

た後では、平静を保って杯を重ねる事は難しい。

「あら、ほんとうだ… ねえ、どうしたのよ、カナ? 躯の具合でも悪いの? 」

細々とした支度を終えてダイニングに戻った芳美も、いつに無く口数の乏しい

妹の具合を訝しむ。

「えっ… いや、あの… そんな事、無いよ、てへへ… 」

なんで自分がしどろもどろに成らなければいけないんだと、半ば腹を立てなが

ら、それでも口数の少ない理由を明かせない加奈子は、引き攣った様な笑顔を

浮かべて、グラスに残ったワインを飲み干す。

けして快適なディナーとは言えなかったが、それでも、評判のデパートの地下

の食堂街で暢達された惣菜類の味には文句も無かったので、加奈子は姉や義兄

の田舎での土産話に適当に相槌をうちながら、もくもくと箸を進めてグラスを

重ねて行く。

 

 

「ねえ、カナちゃん… 聞いているの? カナちゃんってば! 」

軽く肩を揺すられて、加奈子は目を覚ます。

(あれ? いつの間に、私ったら、寝ちゃったのかしら? )

確かに3人でワインは2本目のボトルも半分程には減っているが、これしきの

酒で酔っぱらい眠り込む自分で無い事を、加奈子はよく知っている。

(おかしいなぁ… こんなに眠いなんて。きっと、あんな変なビデオを見せら

 れたせいで、すごく疲れているんだわ。だって、ショックが大きかったもの

 … )

心配そうに自分の顔を覗き込む姉に作り笑いを浮かべた加奈子は、それでも大

きな欠伸を我慢する事が出来ない。

「もう、今日はそれくらいにしておきなさい。ワインなら明日でも飲めるでし

 ょう? ほら、そんな有り様じゃ帰せないから、今夜は客間に泊まって行く

 事にしなさいね」

子供がまだ居ない姉夫婦だから、マンションとは言っても間取りには余裕があ

る。実際に加奈子も何度かは、6畳余りの広さのフリールームの折り畳み式の

ベッドの世話に成った事もあった。

「あぁ… 大丈夫よ、ホント、平気だから、もう帰るね」

あのビデオの件が頭から離れない加奈子は、少し冷たい風に当りたいと思って

、帰宅を決めて席を立とうとした。

「あれ? あれれ… 」

どうにも躯がふらついて、上手く立てない事に疑念を持った加奈子だが、実際

がところ足が縺れて歩くことすら侭に成らないのだ。これしきの酒で何故? 

と、言う疑問も、半ば寝ぼけた頭では答えは見つからない。

「ほら、駄目じゃない? そんなにフラフラして… 悪い事は言わないから、

 今夜は泊まって行きなさいね」

「そうさ、カナちゃん。泊まって行きなよ。そんな具合じゃ危なっかしくて、

 とてもひとりじゃ帰れないぜ」

急激に襲い掛かって来た眠気の誘惑から、義兄と姉の言葉に反発する気力も萎

えて、彼女はコクリと頷いてしまう。姉が寄り添うように躯を支えてくれたか

らので、ようやく加奈子はダイニングを離れて、玄関の脇にあるゲストルーム

へと辿り着く。

姉が折り畳み式の簡易ベッドを用意する間も立っていられなかった加奈子は、

芳美が応援に呼び出した常男の手を借りて着替える事も無くベッドに倒れ込み

、数秒後には安らかに寝息を立てていた。

 

 

「いや… やめて、いやよ、私はお姉ちゃんとは違うのだから… こんなの嫌! 」

いつの間には裸にされた加奈子は、あのビデオの映像の中の姉と同じ様に破廉

恥な器具に全裸で固定されている。彼女を見下ろしているのは、義兄の常男を

除けば名前も知らぬ男達である。無言のままでニヤけた顔をしている獣連中の

前で大股開きの姿勢を強いられた加奈子は、死ぬ程に恥ずかしい思いを胸に抱

いているが、その反面、これまでに経験の無い昂りにも襲われていて、鼓動は

煩い程に脈打っている。

「いや、さわらないで、ああ、やめてちょうだい! お義兄さん! 手を離し

 て、あぁぁぁぁぁ… 」

常男の手が固定された加奈子の太股を撫でて来たから、彼女はかぶりを振って

否定の声を張り上げる。その時… 

「あっ… 」

自分の声で目を覚ました加奈子は、何度か泊まった事のあるゲストルームの天

井を見上げて、姑くは朦朧として考えがまとまらない。

(夢… 夢かぁ… )

留守番を頼まれた姉夫婦の家で恥ずかしいビデオを盗み見した後ろめたさも手

伝って、すっかりとワインに酔っぱらった加奈子は、淫らな夢を見ていた事を

認識して、ひとり頬を赤く染めた。だが… 

「えっ… なんで、あっ! 」

額に浮かんだ汗を拭おうとした時に、寝ぼけた処女はようやく自分の両手が荒

縄で縛り上げられている事に気付く。大いに驚き目を見開く加奈子の前に、妖

然と笑みを浮かべた姉が姿を現した。

「あっ! お姉ちゃん、たいへんなの。私、なんでか知らないけれど、縛られ

 ているのよ」

「あたりまえでしょう。だって私が縛ったのだもの… うふふ、鈍い子ね、カ

 ナちゃんは。グウグウ寝ていて、縛るのが大変だったわ」

とんでもない台詞を吐く姉の事を、加奈子は呆然と見つめて二の句がつげない。

「それにしても、綺麗な肌ね。御主人様は、あなたの事を処女だって、おっし

 ゃっているけれど、どうやら本当みたいだわ。ああ、憎らしい肌。こんなに

 ツヤツヤと輝いて… 」

姉の言葉に、ようやく加奈子は縛られているばかりでは無く、自分が全裸であ

る事にも気付く。慌てて逃げ出そうともがいてみるが、なんと両方の脚は大き

く開かれたままで足首がベッドの両サイドに荒縄で結び付けられているではな

いか! これでは加奈子は逃げようが無い。

「おっ… お姉ちゃん、これ、いったい、何の真似よ! 冗談はよして! ほ

 ら、さっさと縄を解いてちょうだい! お姉ちゃん、ってば! 」

「いろいろと煩い子ね、でも、すぐに静かに成るわよ、ほら… 」

ツカツカと歩み寄った芳美は無造作に手を伸ばして、あろうことか加奈子の胸

元に手を伸ばすと、形の良いバストを鷲掴みにする。

「きゃぁぁぁぁ… あっ… あふぅぅぅぅ… 」

 

 

 

 


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