その6

 

 

 

 

「でも、やっぱり親父のやり方は許せませんよ」

「ふ〜ん、でも、私は正直に言うと嬉しかったのよ」

陽子の台詞に、少年は呆気にとられて絶句する。

「あのね、不能って、意味がわかるかなぁ? トモくん」

最初は何の事か分からなかった智博だが、そんな少年の思いを他所に彼女は話

を続けて行く。

「うちの主人が勃たなくなって、もう5年に成るかなぁ? インポテンツって

 言うのよ、勃起不全なの」

ハンドルを持った美人妻は遠い目をして呟くように語りかける。

「二人でいろんな努力もしたし、もちろんお医者様にも掛かったかれど、ED

 って診断されて、結局、まだ治らないのよ。最初は落ち込んだわ。私が女と

 して魅力が無いのか? って、夜も寝られないくらいに悩んだものよ」

「そっ… そんなことありません。陽子さんは綺麗だし、素敵だし… その、

 あの、えっいと… 」

懸命に言い募る若い信奉者の熱意に、美人妻は微笑みで応える。

「女にも性欲はあるの。欲しいと思ったときに夫はもう役立たず… と、言う

 のはけっこう辛いものなのね。でも、うちの人は、もうすっかり諦めてしま

 って、今では役所のお仲間とマージャン三昧なの。それで私はイライラして

 、つい主人や加奈子にも辛くあたったりしていたわ」

一晩に2度や3度、オナニーで噴いても平気な若者にとって、勃たないと言う

事態は想像が付かないから、今一つ実感が湧かないまま、智博は隣家の美しい

人妻の告白を聞いている。 

「今ふりかえって見れば、欲求不満からヒステリーに成っていたんだわ。自分

 はもう夫から女として見られていないって思い込んでしまって… ノイロー

 ゼみたいなものだったと思うのよ。加奈子がいなかったら、多分離婚を申し

 出ていたでしょうね」

美貌の人妻の目もとに、ふっと寂し気な表情が浮かぶから、智博は言葉を挟む

事も出来ずに黙り込む。

「そんな時に、卓三さんから愛人に成れって言ってもらえたから、実は本当に

 嬉しかったの。まだ自分を求めてくれる人がいると思うと、なんだかホッと

 したわ。あの日以来、私は卓三さんの女よ。もちろん、加奈子の為に今の家

 庭を壊す気は無いわ。まあ、主人の方には未練も無いけれど、それなりに愛

 着もあるから別れたいとも思わないし… ほら、欲求不満はあなたのお父様

 に解消してもらっているからね」

陽子が納得して父親の愛人に成っている事に軽い驚きを感じた少年は、こんど

は父に対する羨望を抱き不愉快に成る。

「ごめんなさい、あなたのお母さまや智博くんには、本当に申し訳ない事をし

 ているわよね。けしてあなたの御家庭に迷惑を掛けるような真似はしないか

 ら、もう少しの間だけ私と卓三さんとの事に目を瞑っていてくれないかしら

 ? 」

厳しい表情をして黙り込んだ少年の存念を読み違えて、陽子は心底申し訳無さ

そうに懇願する。自分の態度が人妻に誤解された事に気付いて、智博は慌てて

口を開いた。

「あっ… はい、その、さっきも言ったけれど、僕は昨日の事を誰かにしゃべ

 ったりしませんから。親父のやり方は汚くて腹も立つけれど、陽子さんがそ

 れでも良いなら、口出しするつもりはありません。でも、正直に言うと、ち

 ょっと親父が羨ましいですよ」

母親には気の毒だが、知らぬが花とも言うだろう。少年は憧れの隣家の美人妻

を安心させる為に戯れ言までも口にする。しかし、そんな智博の台詞を、けし

て陽子は聞き逃さない。彼女は目当ての場所が近付いた事から、ハンドルを操

りながら今日の目論みの仕上げに取りかかる。

「そう… うれしいわ。でもね、トモくんを信用しないわけでは無いけれども

 、女って臆病だから、なにか保証が欲しいのよ」

「保証… ですか? えっと、どうすれば良いのかなぁ… ? 」

真面目に考え込む助手席の少年の向かって、陽子は淫蕩な笑みを浮かべた。

「お願いだからしばらくは黙って私につきあってちょうだい」

車が郊外に出たところで、彼女はハンドルを切ってマーチをラブホテルの駐車

場に乗り入れた。

(へぇ〜、こう成っているんだ? ラブホテルって… )

家族旅行で出かけた事のあるホテルや老舗旅館に比べると、些か下品で安っぽ

い内装であるが、ここが男と女が欲望を満足させる為だけに使われるスペース

である事を思うと、かえって、その安っぽさが興奮を高める様にすら智博は感

じている。

いきなり愛欲の館の駐車場に車を乗り入れた人妻の強引さには驚いたが、彼女

の意図するところを察した聡明な少年は『秘密の共有』の申し出を一も二も無

く承諾する。学校帰りの服そうも、従業員と直接に顔を合わずに済むラブホテ

ルのシステムからすれば何ら問題は無い。父との逢瀬の場なのかも知れないと

、密かに嫉妬の炎を燃やしつつ、彼は生まれて初めて大人の為のホテルの室内

に足を踏み入れていた。

「どう? なにか面白いモノでもあって? トモくん? 」

部屋に入るなり、忙し無く左右を物珍しそうに見回す少年に、陽子は微笑みか

けた。少なくとも、ここに至るまでは彼女の予定通りに事は進んでいる。如何

に少年が目撃した事の秘密を誓ってくれていても、何時、どんなところから綻

びるか分からない。

その点、こうして男女の関係を持ってしまえば、少年にとって秘密を厳守する

事の重要さは大いに増すであろう。彼女を愛人とした、あの卓三のひとり息子

であり、しかも、娘の加奈子のボーイフレンドの智博の童貞を喰ってしまう行

為には、二重三重の背徳感があり、陽子の心の暗闇をいたく刺激している。

卓三との関係を続けて行く内に、己の多淫さを自覚するに至った人妻は、赤ん

坊の頃から知っている智博と男女の仲に成るインモラルな行為に、興奮を隠せ

ない。なにしろ、オシメを取り替えてあげた事もある男の子の童貞を奪い去ろ

うとしているのだから、そのふしだらな行為は彼女の淫心を煽り立ててやまな

い。一通り、少年が好奇心を満たすのを待ってから、彼女は獲物の前に歩み寄

る。

「あっ、陽子さん、なにを… 」

腕を取られた事で驚き振り返った少年を有無も言わさずに抱き締めた人妻は、

そのまま彼の唇を強引に奪ってしまった。しかも、いきなり舌を差し入れる濃

密なキスに面喰らった少年を他所に、彼女は慣れた仕種で唾液を啜り合う様な

ディープなキスを仕掛けて行く。知識としてディープキスくらいは知っている

智博ではあったが、いざ実戦と成るとてんでだらしがなく、ただ人妻に抱き締

められたままで呆然と立ち竦むばかりだ。

「ふぅ… 美味しい。チェリーボーイのキスだわ。ねえ、ひょっとしてファー

 ストキスかしら? 」

ようやく唇を離した陽子の問いかけに、虚勢を張る気力も失った少年は素直に

頷いている。

 

 

 

 

 


次に進む

 

目次に戻る


動画 アダルト動画 ライブチャット