その10

 

 

 

 

(さあ、どうする? 出歯亀クン… 見ているだけでいいのかしら? そっち

 が良くてもこっちは不満よ)

風呂上がりだから邪魔な下着類は一切身に付けてはいない。薄い水色のバスロ

ーブさえ剥いでしまえば、後は生まれたままの姿を曝け出す事に成る。そんな

無防備な姿で隣家と密接した窓の鍵も開けたまま、カウチに寝そべる美女は、

自分のささやかで愚かな冒険にワクワクしている。隣の部屋の窓の明かりは消

えたままだが、そこには壁際にへばりつき、懸命に息を顰めながら目を皿の様

に見開く男の気配が濃密に漂っている。その生々しい感覚がひしひしと伝わっ

てくる事が真弓子を一層大胆にさせている。ワインのボトルを半分ほど空けた

美女はリモコンを使ってテレビを消すと、部屋の明かりはそのままにカウチに

身を投げ出して見せる。

(さあ、どうするの? 窓の鍵は開けっ放し… ワインに酔ったひとり暮らし

 の女が、目の前で迂闊な格好で寝込んでいるのよ。これで乗り込んで来なけ

 れば、私の見込み違いなんだかれど… まあ、ガッカリさせないでちょうだ

 い)

相変わらず隣家のアパートの窓の明かりは消えたままだ。しかし、そこに潜み

息をこらしてこちらを覗く男の気配は濃厚だった。あの野暮ったい小太りの、

しかも巨根の持ち主である男に見られていると思うだけで、ねそべる真弓子の

心は浮き立ち何とも愉快な気分に成る。

(いつまで我慢出来るのかしら? 言っておくけれども、窓の鍵はいつも開い

 ているとは限らないのよ。このチャンスを棒に振る様な奴ならば、こちらの

 方から願い下げだわ)

明かりの消えた隣室からの邪な視線を感じつつ、真弓子はワインの心地よい酔

いに誘われて、そのままウトウトして行く。

 

カラカラカラ… 

まっていた物音だから、真弓子は微睡みの中から現実に立ち返る。しかし、慌

てて身を起こす様な不粋な真似には及ばない。彼女はまだ眠っている事を装い

、隣家のアパートからの侵入者を誘き寄せる。隣の窓との間は30センチとは

離れてはいない。大人の男であればほんのひと跨ぎのスペースであろう。問題

は、そのひと跨ぎを渡る踏ん切りが、あの男にあるかどうか? だったが、真

弓子の期待は裏切られる事は無かった。

カラカラカラカラ… カシャ… 

一旦は大きく開かれたた窓は、こんどはしっかりと閉じられて、御丁寧に鍵ま

でも掛けられた様だ。おそらく乱暴狼藉に及んだ場合の物音や、場合によって

は予想される真弓子の悲鳴が外に漏れる事を警戒したのであろう。彼女は目を

開いて夜中の闖入者を見極めたいと言う誘惑を懸命に胸の中で押し止めて、ま

だ眠り込んだフリを通している。

深夜の自室で、名前も知らぬ男を二人きり… しかも、自分はバスローブの下

には何も身に付けていない無防備な状態でカウチに横たわっている。こんな馬

鹿げた状況が真弓子の興奮をいっそう掻き立てている。おそらく極度に緊張し

ているのであろう、ゼイゼイとした男の荒い息遣いが聞こえてくる。

(よく来てくれたわね。さあ、どうするの? ここには私とアンタだけよ)

部屋に侵入した男の次の行動を思うと、真弓子は己の女陰が潤んで行くのを止

められない。そして、彼女の期待通りに男はカウチに近付き、真弓子の側で片

膝を付く。すぐに彼の手がバスローブの裾を割り、無骨な指先が太股をまさぐ

って来る。

(きた… きたわ… ああ、この男… ほんとうに破廉恥な奴。いくら女が油

 断したからと言って、強姦してよいわけは無いのに… でも、本当に来たの

 ね、あの大きなチン◯が… )

彼女が寝たふりをしているのを良い事に、規男の指使いが大胆に成る。彼は降

って湧いた様なチャンスを躊躇う事なくモノにした。一日の仕事を終えてアパ

ートに戻り、コンビニで買い求めた弁当と缶チューハイをテーブルに置いた時

にテレビの音に気付き、ふと目をマドの外に向けた規男は、とんでもない光景

を目の当たりにする。

これまでは分厚いカーテンで仕切られていた窓が何故か開かれていて、頼り無

いレースのカーテンを通した向こう側の情景が丸見えに成っていた。しかも、

そこにはとびっきりの良い女がアンニュイな様子でカウチに寝そべり、ワイン

を楽しんでいるのだ。30秒ほどの間、彼は窓の外の光景を見つめてから、あ

わてて覗きが露見しないように部屋の明かりのスイッチを落す。

(あっ… こんな事をしたら、かえってワザとらしかったか? )

真っ暗に成った部屋の隅でじっと息を殺して隣家の様子を窺いながら、規男は

己の軽率な行動を反省する。だが、彼の不自然な行為に対して隣家の美女は別

に関心を持った様子も無く、そのままカウチに横たわりテレビを見続けていて

くれる。まさか、真弓子の方から仕掛けた罠とも知らぬ小太りのオタク野郎は

、安堵の溜め息を漏らすと、己の歪んだ欲情を満足させる為に静かに窓枠に歩

み寄る。カーテンの影に身を寄せた規男は、そのまま初めて見る隣のマンショ

ンの部屋を息を呑み観察して行く。

(こんなに良い女が隣に住んでいたんだな。ウチのアパートとは大違いだせ。

 でも、なんで、いきなりこの部屋を使い始めたのだろう? まあ、細かい事

 はどうでも良いかな? とりあえずラッキーだ)

暫くはしどけなく寝転ぶ美女の姿を眺めて満足していた規男だが、彼女の部屋

のレースのいカーテンが揺れている事に気付くと激しく動揺する。

「窓が開いているのかよ… おいおい、どうなっているんだ? 」

昨日までは拒絶する様に窓は開け放たれた事は無く、常に分厚い遮光カーテン

が掛かっていて、中の様子などまったくうかがい知れなかったのに、今日はカ

ーテンどころか窓まで開けた無防備さ見せつけられて、規男の心は乱れ狂う。

少し冷静になれば奇妙な点が多すぎると気付くであろうが、ここまでの成り行

きを全てラッキーの一言で片付けて来たオタク野郎は完全に舞い上がり己を見

失っている。

(チャンスだよな… これって、一世一代の大チャンスだぜ)

暗がりの中で息を顰める規男の目に剣呑な光りが宿った。彼は無言のままで身

を翻して台所に向かう。戸棚から取り出したのは果物ナイフに洗濯紐、それに

ガムテープだ。彼は必要と思われた道具を手にして、ふたたび足音を立てぬよ

うに気を配りながら窓際へと戻ってきた。隣の部屋の女は、どうやらワインに

酔っぱらってカウチで居眠りを初めている。

これまでろくすぽ女と付き合った事が無く、もっぱら二次元キャラを溺愛する

事で己を慰めて来た規男であるから、生身の美女が目の前でしどけない風情で

カウチに横たわっている姿を覗いた事で逆上している。学生時代から異性にま

ともに扱われる事も無く、つねにオタク野郎と軽んじられ疎まれて来た規男は

、心の中に鬱積したどす黒い欲望を発散する糸口を掴み、もう前後の見境を完

全に失っていた。

(畜生め、舐めやがって。お前が悪いんだぞ、油断して窓を開けたまま、そん

 な格好で寝ているお前が、全部悪いんだからな)

何度かソープに通い、すでに童貞では無い規男だが、金を払わずに行うセック

スは初めてだ。当然大騒ぎに成る事も予想されるから、その為の用心の果物ナ

イフとガムテープである。まさか、真弓子の方は全部承知の上で挑発している

とは、この朴念仁の小太りの男には想像も付かない。ただ目の前に転げ込んで

きた千載一遇のチャンスをどう生かすか? それだけが規男の脳裏を占めてい

た。

 

 

 

 

 


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