ビデオ屋の女
その1

 

 

 

 

近所のビデオのレンタルショップの受付のアルバイトが若奥様風の女性に代

わったのは友康にとっては大打撃だった。一本借りる度にスタンプをひとつ

押してもらい、スタンプが10コ貯まれば好きなビデオ1本が無料でサービ

スされるシステムに引かれた彼は今日まで熱心のビデオ屋に通い、30コ押

せばいっぱいに成ってしまうスタンプカードも、既に4冊目が中程まで埋ま

っている。

なにしろ、ようやく受かった大学が自宅から離れていた事もあり、この春か

らアパートでの一人暮らしを始めた友康は、これで心置きなくアダルト・ビ

デオ鑑賞を楽しめる境遇を得ていたのだ。これまでは自宅が小さく弟と部屋

を共有していた事もあり、プライバシーは存在しなかった。しかし、築20

年を経た2Kのボロいアパートであっても、こうして個人の固有空間が認め

られて、誰に憚る事もなくAVビデオをオカズにオナニーに耽る事が出来る

環境を手に入れた今、友康は天国へと辿り着いた思いを強くしている。

これでこそ厳しいく辛い受験勉強を頑張った甲斐があるというものだ。思春

期には家族に気を使い、とくに弟にバレぬ様に己を慰めて来た彼にとって、

こうして堂々とヘッドホンを用いて、夜のリフレッシュ・タイムを満喫する

事の出来る環境は何ものにも代え難い。せっかく大学に通ってはいるが、高

校時代の3年間をむさ苦しい男子高で過ごした若者は、余りにも眩しい異性

の同級生に気後れしていて、入学以来半年が過ぎても、まだ朝夕の挨拶を交

わす程度の女友達… いや、女子学生の顔見知りしかいない。

その点については多少の不満も抱えてはいるが、こうして家族の目を気にし

ないでオナニーに興じられる環境を手に入れたことで、欲求不満はある程度

は解消されていた。なにしろ周囲に男しかいなかった野卑でむさい高校生活

を過ごして来たから、しっかりと化粧を整えて流行りの服で着飾った華やか

な女子大生を目の当たりにするキャンパス生活にはイマイチ馴染めない。

けして生身の女性に興味が無いわけではないのだが、いざ目の前にすると畏

縮してロクに話をする事も出来なった。それに、最近のアダルド・ビデオに

出演する女優は驚く程の美女が多く、なんでこんなに美しい女が、わざわざ

AV女優に成るのか? と、首を傾げてしまう様な子までもが脱いでいる。

ほんとうに良い時代に生まれたとの感慨を深めつつ、彼は足繁く近所のビデ

オショップに通っていた。この日も友康はお気に入りのAV女優の井川千尋

主演作である「美人英語教師・無惨」を一晩堪能した後に返却の為にビデオ

屋に足を運んでいた。

(そろそろ千尋ちゃんの新作の「美貌の音楽教師・崩壊」がリリースされる

 ハズだよな)

最近一番の売れっ子AV女優の作品であるから、こんな小規模なレンタルビ

デオ店であっても、新作は2〜3本は入荷されるが、流石に評判の美人女優

だけの事はありファンも多く競争は激しい。とりあえず最初に借りていたビ

デオを返そうとカウンターに歩み寄った友康は、何気なく背負ったデイパッ

クを降ろしたところで不意に固まる。

(げっ… マジかよ? )

昨日までカウンターの中で不機嫌そうに受付役を務めていたフリーター風の

若者に代わって、今日は驚く様な美女が佇んでいるでは無いか。胸元のお仕

着せのエプロンから、彼女はレンタルビデオショップの新しい店員である事

は間違いは無い。年の頃は26〜7才くらいであろうか? 艶っぽい若妻の

雰囲気のある美女を前に、彼はデイパックの中の井川千尋嬢主演のAVビデ

オを取り出す事に躊躇した。

「いらっしゃいませ、御返却ですか? 」

鈴を鳴らす様に軽やかな美女の問いかけが友康を更に窮地に追い詰める。

「いや、あの… その… えっと… 」

口のなかでモゴモゴを言い訳しながら若者はくるりと振り返り、そのまま新

作のビデオパッケージの並んだコーナーに向かって逃げ出した。

(なんだよ、いったい何で、こんなにタイミングの悪い時に、あんな美人が

受け付けなんだ? )

戸惑いを隠せぬ友康は新作の一般のビデオの物色をしているふりをするが、

目は虚ろに泳いでしまう。

(困ったなぁ、あの人に千尋ちゃんのAVビデオを返却するのは恥ずかしい

 し、でも、だからと言って返さないと延滞料金を取られるし… う〜〜〜

 む、困った)

見ず知らずの他人と言っても、あんなに綺麗な女性にAVビデオを返すのが

恥ずかしい友康は、中々踏ん切りが付かないから時間ばかりが空しく過ぎて

行く。

(ええい、ここで困っていても始まらない! こうなったら自棄糞だ! )

 

自分のアルバイトの時間も迫っている事から、友康はようやく躊躇を捨てて

カウンターに歩み寄る。小さな袋に入ったビデオテープを彼女が取り出して

コンピューターのモニター画面で題名を確認する作業中に彼は非常にいたた

まれない気持ちを持て余してしまう。

「はい、返却確認いたしました。御利用どうもありがとうございます」

心無しか目が笑っている様に見える美人受け付け係りの声を聞いた若者は、

小さく頷くと踵を返して、その場から足早に立ち去って行った。

(まいったなぁ… これからどうしよう? )

耳たぶまで真っ赤に成った友康は、レンタルビデオ屋を出てから恨めし気に

店を振り返り思わず愚痴る。自分のアルバイトの関係上、どうしても昼間に

ビデオ屋を訪れる必要がある若者にとって、受付のカウンターで微笑む美女

はやっかいな存在である。

ひとつ小さく溜め息を吐いてから、失意の若者は背中を丸めてトボトボと歩

み去って行った。あれ以来、友康のリフレッシュタイムは些か味気が無くな

っている。やはり彼が利用する時間帯の受付は、パートの美しい若妻である

から、まさかAVビデオを堂々と借りることも出来ず、しかたなく妥協の産

物として洋物のソフト・ポルノ作品や、邦画でも比較的にエロチックなオリ

ジナルビデオを借りて来てはお茶を濁している。

なにも知らない初心な時期であれば、それなりに盛り上がる事も出来るであ

ろう品々ではあるが、露骨にセックスを題材とした過激なAVを短期間で見

慣れてしまった友康にとって、これらのオカズは何とも頼り無く物足りない

。今日こそは恥を捨ててAVビデオを借りようと決意を固めて店に足を踏み

入れるのだが、あのパートの美女の顔を見るとたちまち気持ちが萎えて、つ

い無難な作品を手に取ってしまうのだ。

 

(まいったなぁ… マジで困った。でも、やっぱり… う〜〜〜ん)

ふと目をやればお目当ての千尋ちゃんモノはまだリリースされていないもの

の、彼が御贔屓にしている他のAV女優の新作も、ボチボチ棚に並べられて

いるのだが、そのパッケージを手にしてカウンターの美女の元に行く勇気は

彼には無い。やむなく今日も古いフランスのソフト・ポルノ作品を手にした

彼は、それでもカモフラージュの為に借りたくも無いアメリカン・ニューシ

ネマ時代の有名な一般作品と一緒に持って内心で溜め息を漏らしながら、あ

のパートの美女の元に歩み寄る。

(バイトのアガリを週に何度か1時間くらい早くしてもらって、夜中に来て

 みようかな? )

いい加減に欲求不満が重なって来た若者は、ソフトなポルノですら彼女に手

渡すのが恥ずかしく、目をそらしつつパッケージをカウンターの上に置いた

 

 

 


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