その3

 

 

 

 

瞳に妖しい光を仄めかせた美女の微笑みに、友康は成す術も無く立ち竦むば

かりだ。いったい、なぜいきなりの来訪を敢行したのか? それが分からぬ

若者は、目の前で物珍しそうに友康の部屋を見回す彼女を見つめていた。

「あっ… そうそう、自己紹介を忘れていたわ。私は若菜恵美よ、結婚4年

 目の人妻、年はミキよりも7つ上、住所は◯◯丁、電話番号は… 」

恵美は自分の携帯を取り出すと手慣れた様子で軽やかにボタンをプッシュす

る。すると、居間のテーブルの上に置いてあった友康の携帯が着信のベルを

鳴らした。

「あら? 今どき着メロも入れていないのね。でも、これで登録出来たでし

 ょう? 連絡はここにちょうだいね」

27才の若妻の一方的な攻勢にたじろぎ、友康はわけも分からず頷くばかり

だ。考えて見れば、彼の個人情報など恵美には筒抜けである。なにしろレン

タルビデオ屋の会員に成る為の申込書には住所、指名、年令、職業、そして

電話番号が漏れなく記載されている。昨今騒がれている個人情報保護法は少

なくとも目の前のパートの若妻には何ら情報漏洩の抑止力には成らない様だ

「はい、これ、お土産」

カードに続いて手渡されたスーパーの買い物袋は意外に重たい。成り行き上

、中身を確かめれば缶ビールとレンタルビデオが数本雑多に突っ込まれてい

る。

「えっと… ありがとうございます」

まだ何がどう成っているのか分からない若者は、とりあえずビニールの買い

物袋をテーブルの上に置いた。

「ほらほら、中身をちゃんと見てちょうだい」

恵美は一旦は若者に手渡した買い物袋をもう一度自分の方に引き寄せて、中

からビデオが入っているケースを取り出す。

「ねえ、井川千尋ちゃんが御贔屓なんでしょう? ほら、これ、昨日店に入

 ったばかりの新作よ」

テープの背中に「美貌の音楽教師・崩壊」と言う文字が踊るアダルト・ビデ

オを取り出した美女の思惑が分からず、友康は目を丸くする。彼が千尋ファ

ンである事は、貸し出し履歴を見れば容易に想像は付くであろう。しかし、

察する事と自宅までデリバリーする事は大違いだ。

「あのね、私がカウンターに立つ様になってから、キミはこの手のAV作品

 を借りなくなっちゃったでしょう? 気にしての事なら悪いかな? と、

 思って、今日声を掛けてみたのだけれど、キミはさっさと帰ってしまった

 の。ねえ、気を悪くしたの? 」

「いえ、そんな… あの恥ずかしくて、それで慌ててしまって… 」

図星をさされて慌てる若者を、恵美は好ましく思い微笑んだ。

「そう、それならば良かったわ。これからは私に遠慮なく好きなAVを借り

 てちょうだいね」

ちらっと上目使いで友康を見た彼女は続けて驚くべき事を口にする。

「それで、ひとつ頼みがあるのだけれど… 私にも、このアダルトビデオを

 見せて欲しいのよ。ほら、家に持って帰って旦那にバレると怒られちゃう

 し、興味はあるんだけれども店のモニターで見るわけにも行かないし…

 困っていたところに滝丘クンと、こうやって知り合いに成れたワケなの」

「うっ… うちでって? この部屋で見るんですか? その、えっと、ビデ

 オを? 」

唐突な申し出に面喰らう友康の態度を是認と判断したのか? 恵美はケース

からテープを取り出すと、スタスタと居間のテレビに向かって歩き出す。

「えっと、テレビのコントローラーは… ああ、これね? それじゃ、ビデ

 オの電源を入れてっと… 」

井川千尋の新作のテープはあっさりとデッキの挿入口に吸い込まれた。

「ねえ、ほら、そんなところに突っ立っていないで、こっちにいらっしゃい

 よ」

段取り良く自分の土産の冷えた缶ビールを手にした美女は、二人掛けのソフ

ァの一方に陣取り、まるでこの部屋の主人の様に友康を手招きする。まるで

状況が掴めぬままに、彼は引き寄せられて、恵美が指し示した隣の席に腰を

降ろす。友康にしてみれば初めて自分の部屋に家族以外の異性を招いた事に

成るのだから、けして悪い気はしない。しかも、相手が恵美の様な美女であ

れば、どんなに強引な展開であっても断る様な野暮でも無い。

「ほら、すごいわよね、この千尋って子。こんなに綺麗なのに、なんでアダ

 ルトビデオの俳優をやっているのかしら? 」

返答に詰まる問いかけを喰らって困り果てる友康だったが、彼女の方は委細

かまう事も無く画面を見続けている。すっかりと謎の人妻のペースにはまっ

た若者は、他に成す術も無く、ただ彼女と並んで画面を見つめるより他に手

立てはない?

「うわぁ… この男優さん、大きいんじゃない? ボカシてあるからよく分

 からないけれど、ほら、千尋ちゃんの口、目一杯に開いているもの。あん

 なに大きなのだと、フェラチオするのもたいへんよねぇ… 」

いきなりフェラチオと言う単語が彼女の口から飛び出した事に、友康は大い

に面喰らう。考えてみれば恵美は人妻と名乗っているから、当然旦那との夫

婦生活もあるだろう。セックスについては童貞の彼よりも遥かに経験の豊富

なハズの美女の傍らで、若者は股間が強張るのを止められない。画面を熱心

に眺める恵美の横顔をチラチラと窺いながら、彼は妄想が膨れ上がって行く

(いきなり訪ねてきて、いっしょにアダルトビデオを見せてくれって言うく

 らいだから、これは誘ってくれているのかな? でも、もしも違ったら…

 いや、そんなハズは… まてよ、えっと… )

せっかくの千尋の新作なのに、隣の美女の存念を思い計る事に忙しく、友康

はイマイチ集中しきれない。やがて画面の中では美貌のAV女優が若き獣の

愛人の巨根に貫かれて、演技をわすれた艶っぽいよがり泣きを見せている。

(そうだ… 手だ、手を握ってみよう… まっ… まてよ、そんな事をした

 ら怒られるかも知れない。でも、こんな風にアダルトビデオを一緒に見て

 いるんだから、手を握るくらいは許してくれるんじゃないかな? でも、

 もしも、そんな気が全然無かったら… )

そんな若者の逡巡は杞憂に終わる。スピーカーから漏れてくるAV女優のよ

がり声に刺激されたのか? なんと恵美の方から彼の手を握って来たのだ。

驚く若者に対して彼女は悪戯っ子の様な微笑みを浮かべる。

「ねえ、ひょっとして滝丘クンは童貞かしら? 」

これまた赤裸々な問いかけであるが、彼女にしっかりと手を握られた若者は

、思わず素直に頷いてしまう。

「やっぱりね。なんとなくそんな気がしたのよ」

小さく頷いた美女は目を細めて嬉しそうに彼を見つめる。

 

 

 

 

 


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