その13

 

 

 

 

傍から見たならば何とも珍妙な光景であるが、当事者等にとっては外見などに

こだわる余裕は残されてはいない。なにしろ全裸の美人妻が跪く両脇には、こ

ちらも着衣を全て脱ぎ去った男等が、股間を猛らせて控えているのだ。

「ねえ、まだ? テルくん? 」

肌を露にした美女が、彼女の夫に問いかけた。

「あっ… もうチョイ… えっと、露出はこれで良いし、アングルが… 」

この部屋で唯一、服を着ている輝夫は固定した大型のデジタルビデオカメラの

調整に余念が無い。既に持ち込んであった照明器具により照らし出されたモデ

ルの3人は、輝夫の真剣な眼差しを見て、各々が苦笑いを浮かべている。ここ

は何時もの市営住宅では無く、良隆が所有する別荘なのだ。彼の隠れ家的な場

所を提供したのは、輝夫に対するうしろめたさのせいかも知れない。

なにしろ借金のカタに輝夫の妻であり、良隆にとっては幼馴染みの修子と肉体

関係を持つに至ったのは、確かに彼にとっては不覚であった。しかし、この不

倫行為が実は夫の輝夫の企みである事を知らされてからは、浮気では無く複数

プレイに変質したセックスを、寝取られ夫は映像で記録する事を熱望している

。やはり古い付き合いの輝夫の懇願に負けて、良隆はもう一人の不倫仲間(?

)雅哉を巻き込んで、こうして4人は週末に良隆の別荘に集まっていた。

ようやく固定式のビデオカメラをセットし終えた輝夫は、続いて首からぶら下

げた一眼レフのデジタルカメラの調整に取りかかる。おそらく、それが終われ

ば、同じように首からぶら下げている小型のビデオカメラの準備を行うのであ

ろう。忙しく動き回る寝取られ夫を前にして、雅哉が呆れて唸る様に口を開く

「おい、恨むぜ、良隆。なんで、俺までこんな茶番に巻き込むんだ? しかも

 、ビデオで撮影するなんて聞いてないぞ」

友人の戯言に、良隆は微笑みで応じる。

「おや? 不満なら帰るかい? 俺はノブちゃんと間に入れての3Pならば、

 喜んでお前も馳せ参じると思っていたのさ」

「そりゃあ、テルの野郎を抜きならば、俺は何時でも仕事を放り出して参上す

 るが、これは無いだろう、これは… 」

眩いライトの光りを右の掌で視線から遮り、まだ納得の行かない雅哉は愚痴を

零した。

「あら、つれない事を言わないであげてよ。あの人ったら、ヨシくんがOKし

 てくれてから、もう有頂天で毎晩はしゃいでいるのよ。この話が決まって以

 来、大好きなマージャンにも行かないで、毎日早く家に帰って来てはビデオ

 の操作や写真の練習をしていたの」

夫がコマ鼠の様に忙しく準備を重ねる間に修子は、まだ納得の行かぬ間男のひ

とりを説得している。

「一人だけ仲間はずれにすると機嫌を損ねるかも知れないから誘ったけれど、

 どうしても気がすすまないならば、ノブちゃんの相手は俺ひとりで務めるか

 ら、お前は服を着て輝夫の手伝いに回ったらどうだい? 」

事がここに至った以上、そんなことは絶対に承服しないと知りながら、良隆は

意地悪な台詞を投げかける。

「おいおい、まてよ、そう結論を急ぐなよ。なあ、良隆、お前、この件に関し

 ては性格が悪く成ってないか? 」

一応文句を言ってみただけで、実はこの奇妙なパーティに興味津々な雅哉は、

悪巧みを共にしてきた相棒の言葉に慌ててしまう。確かに雅哉で無くても、こ

の別荘の広いリビングの様子を見たならば二の足を踏むと言うものだ。邪魔な

ソファや家具類は部屋の片隅に追いやられていて、毛足の長い絨毯の敷き詰め

られた部屋の中には、はりきる輝夫がレンタル用品店から暢達して来た照明器

具や録音装置、それに大型の撮影機材が並べられていた。

かなり本格的な撮影が可能な環境で、しかも夫である輝夫の目の前で長年の憧

れだった美女を犯す異状なセックスに雅哉の目も血走っている。すっかりと余

裕を失い盛んに不平を口にする友人に比べて、良隆の方は落ち着いたものだ。

実は輝夫の覗きが露見した後に数回、彼は情けない寝取られ夫の見守るまえで

修子を抱いて肉交に及んでいる。人妻と成った修子を、かつてのライバルであ

り、しかも、まんまとしてやられた輝夫の前で犯す興奮に、良隆もすっかり溺

れている。

「まあ、人助けだと思えよ。こんな事を企んでから輝夫の奴は悪癖の賭けマー

 ジャンから足を洗って、せっせとビデオだのカメラだのの勉強に明け暮れた

 そうだからな。これも我等が女神のノブちゃんの為さ」

往生際が悪く色々と煩い友人の愚痴を封じる口実を与えてやった良隆は、目の

前で跪く美人妻を改めて眺めてみる。比べるのも申し訳の無い話だが、名家の

出身を鼻に掛ける自分の妻よりも白く肌理の細かい肌、夫に加えて2人の愛人

を持ったことで成熟が進み、豊かに実りはち切れそうなバスト、ほどよく脂の

乗ったウエストのくびれは青臭い小娘ではけして醸し出す事の出来ない色香に

溢れて見える。

(いい女だよな… こんなに良い女を放り出してマージャン三昧とは、テルは

 本当に阿呆な奴だ)

学生服を着ていた頃からのマドンナを前に、良隆は胸の中で輝夫を毒づく。も

っとも、その輝夫の小博打の悪癖が無ければ、こんな夢の様な関係が開ける事

も無かったのだから、余計に良隆の胸中は複雑だ。案外と寝取られ夫の撮影準

備が手間取るものだから、束の間思い悩んでしまった良隆は、自分と同じ罪を

犯す雅哉の方をチラっと盗み見る。やはり同罪の相棒も、この状況には当惑し

て何時もの威勢は感じられない。このまま時が悪戯に過ぎれば二人の間男が萎

えてしまう瀬戸際に至り、ようやく脳天気な輝夫が嬉しそうな声を張り上げる

「OK、準備できた、さあ、みんな、始めてくれ! 」

なんとも沈鬱な時を経て、ようやくサバトは開演される。

「それじゃ、最初はマーくんからね」

やや萎えかけた雅哉の男根の根元を捕まえると、彼女は亀頭をパクリと口に含

んで見せた。その光景を見てすかさず輝夫がデジタルカメラのシャッターを切

る。お預けを喰らったあとに、ようやく牡の性臭の漂う男根を口にした人妻は

、それだけで恍惚とした表情を見せて、カメラのファインダー越しに見つめる

寝取られ夫を驚喜させている。

一方、修子の方は焦らされた事で性感が荒ぶり、口にした肉棒をジュルジュル

と音を立てて啜り上げている。唇を大きく開いて剛直を頬張ることから、整っ

た顔だちが妙に間延びするのがなんとも艶っぽい。夫の不手際から散々に待た

された美人妻は、これ以上は無い淫媚さを

見せつけつつ、口にした肉棒をしゃぶり舐め回す。まるで己の欲情を燃え上が

らせる為にわざと恥知らずな振るまいに及んでいる様に見える修子は、最後に

頬を窄めて強烈な吸い上げを見せて雅哉を唸らせた後で、一旦名残惜し気に彼

の男根から口を離す。

「さあ、お待たせ。こんどはヨシくんよ。ねえ、アナタ… ちゃんと撮れてい

 るかしら、これからヨシくんの大きなオチ◯チンを。おしゃぶりするのよ」

「ああ、バッチリだよ修子、お前のいやらしい姿を、しっかり撮っているから

 な」

昂る夫の上擦った声を聞いて満足したのか、修子は嬉しそうに微笑みながら、

今度は良隆の巨根に指をからめる。

 

 

 

 


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