「隠す事は無いだろう? まあ、まさかお前みたいに真面目な奴が、放課後の こんな場所に現れるととは思ってもいなかったよ。とりあえず、慌てて他の セン公にチクんなかった事には礼を言っておくぜ。表沙汰に成れば、オレ等 よりも麻子チャンが身の破滅だからな」 狡猾な狭山は、自分等の事よりも麻子が不味い立場に置かれる事を強調して、 それとなく聡に秘密を守る事を強要する。もちろん、聡にとっても、その淫ら な行為を盗み見て、股間を自分で悪戯していた事実の露見は避けたい事柄だっ たので、不良少年の企みを承諾して頷いて見せた。 「心配しないでいいよ、ここで見た事は絶対に口外しないからさ。それに、こ んな事をベラベラと喋っても、誰も信用するわけ無いからね」 なにしろ、たった今じぶんの目で見たのに、まだ聡には旧音楽準備室の中で繰 り広げられていた痴態が本当に事実なのか? イマイチ自信が持てないのだ。 あの知的で明敏な麻子先生が、不良生徒2人を相手にセックスに耽るなどとは 、どう考えても現実感が乏しすぎて笑い話にも成らない。誰か他の者から噂と して耳にすれば、おそらくは一笑に付すであろう馬鹿話としか思えない目撃談 であるから、彼は口を噤む決意を固めている。しかも、もしもこの話を誰かに 漏らせば、それは自分の恥ずかしい行為の露見も意味しているのだから、聡が 口外するはずは無い。 「それじゃ、ボクはこれで… 」 秘密を守ると約束した以上、もうこの場に留まる意味は無いから、聡は頬を赤 くしながらそそくさと立ち去ろうとする。しかし、狭山は慌てて逃げ出す級友 の腕を捕まえると、力任せに引き戻す。 「慌てるなよ。別にお前を信用しないってワケじゃ無いけれど… 俺は臆病な もので、保証ってヤツが欲しいのさ。ここで見た事を他では話さないって言 う確実な保証がな」 「保証って言われても、いったいどうすれば良いんだい? 」 腕力では遠く及ばぬ不良生徒に凄まれて、聡はすっかりビビっている。 「別に難しい事じゃ無いさ。お前にも当事者に成ってもらえば、それで俺等は ひと安心だろう? 仲間に成ればベラベラと余計な事を他で話す事も無いか らな」 目に不穏な光りを仄めかせた不良少年の言葉に、聡は驚き言葉が出ない。 「隣の部屋の中を覗いてチ◯ポを弄っていたお前だから、異存は無いよな? 」 痛いところを突かれて、聡は顔を赤くしたまま俯いた。逆らう気力の萎えた少 年を、狭山は腕力に物を言わせて引き摺る様に隣室を仕切る扉に歩み寄る。 「えっ… あっ… まって、その… 」 聡が慌ててもがいてみても、狭山の腕の力にかなうわけも無い。 「グズグズ言うなよ、根性を決めろ」 大人しい少年を仲間に引き入れる決意を固めた不良は、聡の都合など無視して 、ついに扉を開いてしまった。 「おかえりなさい、狭山サン、随分と長いウンコでしたね… あれ? そいつ 、何です? 」 美貌の英語教師の肉体を堪能した2人の不良が怪訝な顔をする中で、狭山は引 き摺り込んだ聡を軽く突き飛ばす。 「あわわわ… 」 たたらを踏んだ少年は、目の前のマットに倒れたままの全裸の麻子を見て、そ のまま絶句して固まった。そんな真面目な少年の態度が可笑しいのか? 狭山 は愉快そうに笑い声を上げる。 「あはははは… 西岡の野郎に見られちまったのさ。お前等、コイツが覗いて いたのに気付かなかったのか? 間抜けな連中だぜ」 ボスの言葉に、2人の不良の表情が曇る。 「ヤバいっすね。口を封じないと、停学じゃ済まないっすよ」 「タコ殴りにして、絶対に秘密を守らせないと」 落ち着いているボスに比べて短絡的で血の気の多い子分らの言葉に、聡は震え 上がる。腕力などからっきしな少年であるから、不良生徒3人を向こうに回し ての喧嘩など、想像も出来ない。ズタズタにボコられた自分の姿を想像すると 、震える脚からスッと力が抜けてしまい、立っているのも難しい。 「おいおい、これから仲良くやって行こうってダチを、そんなに虐めるものじ ゃ無いぜ。聡には色々と役立ってもらいたいからな」 不穏な気配を漂わせる二人の子分を制して、狭山は馴れ馴れしく聡の肩を抱き 微笑んだ。 どうやら、この場でリンチに合う最悪の展開は免れた事から、真面目な少年は 内心で安堵の溜め息を吐いている。背中を冷や汗がツツっと流れるの感じた聡 は、これから自分がどう成るのか? 展開が読めずに黙り込む。 「せっかく仲間が増えたって言うのに、なんだよ? 麻子チャンはお眠なのか ? たった2人を相手にしただけで、だらしないぞ」 狭山は聡から離れると全裸で悶絶する美貌の英語教師の元に歩み寄り、瞼を閉 じたままの彼女の頬を軽く平手で叩いて起こす。 「えっ… あっ、狭山くん… 」 激しい行為に溺れて気絶していた美貌の女教師が、目を開き虚ろな顔で狭山を 見つめる。 「ほら、麻子ちゃん、俺等の新しい仲間のニシオカを紹介するよ。これからは 俺等と同じ様にニシオカにも可愛がってもらうんだ」 新人の登場を知らされて、麻子の顔の狼狽の色が走る。彼女は恐る恐る顔を上 げて、そこに確かに聡が佇んでいるのを発見する。 「新しいって… 誰にも言わないと約束したじゃない。ダメよ、仲間を増やす なんて、聞いていないわ」 眉を曇らせて抗議する美貌の英語教師だが、狭山は彼女の言葉に耳を貸す様子 は無い。 「他の奴らに吹聴はしないと言ったが、仲間を増やさないとは言ってないぜ。 それに、心配するなよ、ニシオカで打止めさ、もう他に仲間は作らない」 偶発的な出来事から一味に引き入れた事などは、おくびにも出さずに、狭山は 真面目な少年の参加を承諾させる。最初こそ不機嫌に成った麻子だが、自分が 弱い立場である事を思い出すと、それ以上の抗議をする気力も萎える。美貌の 英語教師を納得させた不良のボスは、あらためて聡を見て笑いかけた。 「ほら、そんなところで、突っ立っていないで、こっちに来いよ、ニシオカ」 「えっ… あっ… ああ、わかった」 配下の二人の不良少年が胡散臭そうに見つめる中で、リンチを恐れた聡はボス の命令に従い、彼の元に歩み寄る。
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