その15

 

 

 

 

『もう、よろしいですか? 河野さん』

『えっ? あっ… ああ、よい画が撮れました。どうぞ、先を続けて下さい』

亡き叔父の許可を得て、若者は再び牧子にのしかかり、こんどは遠慮の無い腰

使いを見せ始めた。

『あっ… あぁぁぁぁ… だめ、そんなに、しないで… きゃぁぁぁぁぁぁぁ

 … あふぅ… それ、いや… ああ… 』

焦らされ抜いた末に、ようやく辿り着いた桃源郷から無理矢理に現世に引き戻

された美貌の若叔母は、驚いて目を見張り己がまだ苦境に最中にいる事を思い

出した。なにしろ一度イッたばかりの敏感な女体には、若者の巨根はかえって

毒にすら感じられている。慌てる事の無い隆俊のゆるやかな律動なのに、子宮

を小突かれる刺激が凄まじい快美を生み出して牧子を困惑させている。

気持ちは十二分に満たされて、心地よい浮遊感の中で絶頂の余韻に浸っていた

彼女は、そこがまだ終点では無く、次の絶頂に向けての出発点であった事を思

い知らされた。もしも後ろ手に荒縄で縛られていなければ、自我の崩壊を恐れ

る本能から、彼女は渾身の力を振り絞り、得体の知れぬスタミナと巨根を合わ

せ持つ陵辱者を突き飛ばして逃げ出していたであろう。

だが、実際は厳しく戒められた上に、最初の強烈な絶頂に躯が痺れて、みじろ

ぎする事すら難しい状態に陥っている。牝が貪欲に悦びを貪る本能をあさまし

いと嘆きつつ、それでも与えられる快美の前では随喜の涙で応えるより術の無

い牧子は、しだいに若者の律動にあわせて淫らに尻をうねらせ始めた。忍冬の

会と名乗るSM同好会に所属する様に成って数カ月の間に、牧子は自分が大き

く変わってしまった事を自覚している。

如何に、それが夫の望んだ道とは言っても、こうして恐れを感じる程の巨根に

貫かれて、脳天までも突き抜ける様な峻烈な快美に咽び泣き、子宮までも蹂躙

される問答無用の律動で踊らされてしまうと、この無惨な境遇が一転して天国

の入り口に思えて成らない。

『あぁぁぁぁぁぁ… また、ヘンに成る… だめぇぇぇ… ゆるしてぇぇ… 』

焦らすだけ焦らされた上で、ようやくに至った絶頂が、単なる踏み台にしか過

ぎなかった事実を思い知らされて、牧子は燃え上がる欲情の坩堝の中で魂まで

も蕩けさせて行く。これまでに重ねて来たセックスなど、今の肉の交わりに比

べれば空疎な子供の遊びであろう。何度も意識が遠退き目の前が真っ白に霞ん

でくるが、その都度、力強い突き上げのせいで脳味噌まで揺さぶられる衝撃的

な快美が、彼女を無理矢理に覚醒させる。

もはや悶絶する事すら許されぬ責めの前で、彼女は何もかも忘れてひたすらに

白い尻を振り続けている。ビデオカメラを構えた叔父も、愛する妻が無我の境

地を彷徨う美しい亡者に成り果てた姿を、執拗に追い掛けている。もういった

い何度、牧子は断末魔の悲鳴を漏らして意識を飛ばした事であろうか? その

度に若者の巨根に子宮を擦り潰されては覚醒を強いられ、凄まじい快美の荒波

に翻弄されて、また気絶に至る行程をエンドレスで見せつけられて、孝昌は完

全に打ちのめされている。

自分も高校生の時代から女性とは大いにかかわり合いを持っていたから、すく

なくとも同年代の男であれば、遅れを取ることはあるまいと自負していた彼は

、画面の中で延々と美叔母を犯す隆俊の姿を見て、深刻な敗北感に苛まれてい

る。いくら財産があるとか、どれだけ権力を持っているとか言う些末な問題で

は無く、男が男と生まれた上で誇れる精強さをまざまざと見せつけられてしま

っては、画面の前で孝昌は、ただ項垂れるばかりだ。

(でも、牧子さんを、こんなにしてしまう叔父さんの意図は、いったい何なん

 だ? )

愛する妻を他人に抱かせるどころか、牡としては最強の部類にある若い責め師

に委ねて、肉欲地獄に堕とす叔父の目論みの真意を計りかねて、孝昌はひとり

で首を傾げている。そうしている間にも荒縄に縛られた叔母は、遂には牝の乱

れをあからさまにして、切ない悲鳴を噴き零す。

『ひぃぃぃ… もう、ゆいるして、おねがい、ああ… 死んじゃう、助けて、

 アナタ! この人を止めて… 牧子は、本当に気が狂ってしまいますぅぅぅ

 ぅ… あひぃぃぃぃぃぃぃ… 』

切羽詰まって泣叫ぶ美叔母の醜態を、それでも亡き叔父は執拗に記録に留める

行為に没頭している。もはやプレイの域を突き抜けているだろう。半狂乱に成

り果てた牧子を休ませる慈悲など微塵も見せずに、画面の中の若者は微妙に強

弱を付けた腰使いで彼女を追い詰めて行く。

『ゆるしてぇぇぇ… ああ、もう、死ぬわ… 殺して、ひと思いに犯り殺して

 ぇぇぇぇ… あひぃぃぃぃぃぃぃぃ… 』

恐るべき精力を誇る若い責め師から犯されて、牧子は何度も頂点に追い上げら

れては、最初からやり直す様に繰り返して陵辱されて行く。汗に塗れた裸身を

震わせて絶頂に至り、咽を絞り艶っぽい悲鳴を張り上げた牧子は、完全に愛欲

に溺れた肉の奴隷に堕ちている。

 

 

いったい、どれくらいの時を巨根で貫かれ続けたのであろうか? ついに牧子

は白目を剥き、すっかりとルージュがはがれた唇の端に泡を噴いて、まったく

無反応な状態に陥っていまった。

 

 

完全に意識を失った美叔母の弛んだ肉壷から、若者が巨根を抜き去った。赤銅

色の剛直は淫液でべっとりと濡れ光っているが、その勢いは些かも衰える気配

は見えない。

『調子に乗りすぎて、少し度が過ぎましたね。30分ほど休んでから、仕切り

 直す事にしますよ』

悶絶した叔母から離れた若者が朗らかに休憩を告げる。やがて、画面から叔母

が消えて、ベッドの脇の壁を映し出す様に成る。おそらく撮影を一時中断した

にも関わらず、スイッチを切るのを忘れているのであろう。ゴトリと耳障りな

音と共に映像が固定された。

『もう一度、確かめておきたい事があります、河野さん』

相変わらず画面は壁を映し出しているが、音声だけは流れて来る。

『なんでしょうか? 』

『河野さんの御希望は、奥さんを誰にでも股を開く便器女に変える事でしたよ

 ね? 私にとっては難しい注文ではありませんし、こうやって奥さんは着々

 とあなた好みの女に成りつつあります。しかし… 』

一旦、言葉を切った隆俊は、小さく溜息を漏らした。

『もしかして、後悔なさってはいませんか? いまならば、まだ間に合います

 。ここで引き返せば、美しい奥さんは刺激的な体験だったと笑顔で元の貞淑

 な牧子さんに戻れるでしょう。SMや多数相手のセックスもお遊びの領域で

 留まります。でも、彼女は言わば分岐点に差し掛かっています』

『分岐… 点… ですか? 』

亡き叔父の声は震えている様に聞こえるのは気のせいであろうか?

『俺は若輩者ですが、師匠に付いてこれまで何人かの女性を淫の闇に堕として

 来ました。事情は語れませんが、もう二度と普通の肉の交わりでは満足しな

 い所にまで追い詰めた事もあります。まだまだ未熟者がなにをわかった様な

 口を利くのかと笑われてしまうと思いますけれども、牧子さんは確実に崩壊

 点に差し掛かっていると思うのです。もうひと押しすれば、彼女もまた性の

 暗黒面に魅入られて、普通の生活ではけして満足しない淫売に堕ちるでしよ

 う』

延々と壁が映し出される光景の中で語られた隆俊の言葉に、傍観者である孝昌

は驚き絶句する。

 

 

 

 

 


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