美少女 5

その1


 

 

「恵里子にバレたの! 」

土蔵の地下の秘密のスペースに辿り着くなり、美香の形の良い唇から憤怒の隠

った言葉が吐き出された。

「恵里子… さん? 誰だい、その人」

普段は使われていないお屋敷で合流したときから、恋人の御機嫌が斜だった理

由を明かされて佑二は当然の疑問を持った。

「恵里子さんて… 「さん」付けして呼ぶ必要はなし! 恵里子って呼び捨て

 か、頭に馬鹿を付けてウルトラバカ恵里子で上等! 根性曲がりの性悪女に

 「さん付け」なんて、もったいない! 」

怒りで眦を吊り上げながら美香は長椅子にヴイトンのバッグを放り出す。どん

なに激しく憤っていても端正な横顔は美しく、綺麗な子は何をしていても、や

っぱり綺麗なんだなと、佑二は場違いな感想を持って恋人を眺めていた。

「恵里子は私の父方の従姉妹よ」

ようやく恵里子嬢なる謎の女性の正体を知らされた佑二は、新しく勃発した問

題がやっかいに成る予感に苛まれた。彼の悪だくみにより、かろうじて丸く治

める事には成功したが、以前に教育実習生として彼と美香の前にあらわれた美

貌のレズビアンの舞子もまた、美香の親族のひとりだった。

佑二の一計にまんまとはまった同性愛主義の教育実習生は、今では男の良さを

再認識して新しい恋人と人生を謳歌している。だが、すこしばかり薬が効き過

ぎたのか? 月に1〜2度はふらりとお屋敷に現れて、憤る美香を手玉にとり

つつ佑二も交えた3人でのプレイを楽しむ性豪の者と化していた。

「えっと、その恵里子さんに、何がバレたっていうんだい?」

「だから、アタシとアンタの関係よ! 」

もしもそれが本当ならば由々しき問題だ。日頃な使われていないお屋敷の土蔵

で、高校生同士としては些かどころか大いに問題のある行為に溺れている事を

、第三者に露見した時の騒動を思うと佑二は頭が痛くなって来た。

「それで、その… どこまで知られたのか、分かるかい? 」

「見られちゃったのよ、二人で一緒の所を! 」

美香は忌々しそうに言いながら、右手の拳を振り上げる。

「ほら、先週に日曜日の夕方、この屋敷を2人で一緒に出ちゃったじゃない。

 あの時に不覚にも、性悪馬鹿女に見られたの」

確かに先週の日曜日は、お昼前から密会を楽しんだ記憶がある。まだ二人が知

り合ったばかり頃は、周囲に関係が露見する事を恐れて神経質なほど警戒して

いた。お屋敷を出るときも、少し前ならば当然時間差をつけていたのだが、付

き合いが1年近くになっている今日では、もうそこまで警戒する必要を感じな

くなっていた。

美香も佑二もお互いの家から、この密会場所のお屋敷まで相当に離れているの

で、間違っても知り合いに出会す心配はいらない。それでも、さすがに二人一

緒に公共の交通機関で移動する事は憚られたので、裕福な家庭のお嬢様として

育てられて小遣いに不自由の無い美香は大通りに出てタクシーを拾い帰宅の途

に付き、一方の佑二は10分ほど歩いた先のバス停から、バスと電車を乗り継

いで自宅のある団地へと戻っていた。

だから、仮にそれが油断だとしても、二人が一緒にいるのは、お屋敷の大門の

脇の潜り戸を出たほんの一瞬の事なので、その場を見られたと言う美香の主張

に疑問を感じて少年は首を傾げていた。

「でも、なんで恵里子さん… いや、恵里子は、偶然と言っても、そんな場面

 を見れたのかなぁ? 」

「あの馬鹿女ったら、この近所へ用事があって出掛けて来て、ついでだから本

 家のお屋敷を見物するつもりでやって来たって言っていたわ。まったく、余

 計の事を思い付くんだもの、性悪女のくせに! 」

 

なるほど、最近では珍しい広大なお屋敷だから、親戚の者であれば近所に立ち

寄った折には外観だけでも眺めて帰る気にも成るだろう。不運だったのは、た

またまタイミングが合ってしまい、美香と二人で出てきた所を美香の従姉妹の

女の子に目撃されてしまったことだ。

「たまたま門から一緒に出て来ただけで、勉強を一緒にしていた学校の友人だ

 と誤魔化せないかな? 」

「恵里子はね、根性がまがっていて性悪で守銭奴で嫌味な馬鹿女だけれど、頭

 は悪くないのよ。あの女、嬉しそうに電話して来て『昼間と言っても日曜日

 に他に誰もいないハズのお屋敷で、美香ちゃんは男と二人で何をしていたの

 かな〜? 』って、カマ掛けてきたの。当然とぼけたけれども、あの子『ふ

 〜ん、後ろぐらいところが無いならば、美香ちゃんのお母さまに、このお話

 をしても全然OKよね? ねえねえ美香ちゃんのお母さま、美香ちゃんが、

 あのお屋敷に日曜日の真っ昼間っから男を引っぱり込んでいるんだけれど、

 どう思われます? うふふ… な〜〜んてね、テレビでも評判の教育評論家

 の偉そうな母さまが、どんな顔するかしら』って、ほざきやがったわ!」

おそらくその従姉妹は美香に前から何か含むところがあったのだろう。二人が

一緒に屋敷の門から出てきたシーンを目撃しただけで、そこまでのストーリー

を練り上げる頭の回転の良さに佑二は内心で舌を捲いた。そんな恋人の思いを

他所に、美香の憤怒は膨らむばかりだ。

「あいつ『これで美香ちゃんは、アタシのパシリ決定ね。これからは何でもハ

 イハイと、アタシの言うことを利かなくちゃ。もしも、今までみたいに生意

 気な口をきいたら、アタシ美香ちゃんのお母さまに、ポロっと、お屋敷での

 密会の事、喋っちゃうかもね〜〜。うふふ… 今度会うのが楽しみよ』って

 、脅かすの。アッタマに来て、電話をガチャ切りしちゃったんだけれど、こ

 れってかなりマズいよねぇ… 」

お屋敷の一角にある土蔵の地下でのアブノーマルで濃密な肉の交わりまでは知

られていなのが幸いだが、もしも恵里子がべらべらと美香のお屋敷での事を密

告されたら、これからの二人の秘密の逢瀬が難しくなる事も予想された。

(さて、どうしたものかな? )

秘密のお楽しみを邪魔されたくない若者は、恋人から目を逸らすと脳味噌をフ

ル回転させて事態の打開策を模索する。

「おい、佑二! 」

「へっ? 」

不機嫌な恋人に、いきなり両手で頬を捕まえられて、力ずくで正面を向かされ

た若者は問題解決の為の思考を中断させられて面喰らう。

「あんた、今、恵里子の事を考えていたんでしょう? 」

「ああ、うん、色々とね… 」

「不潔! 破廉恥! このチン◯ン大魔王! 女ならば、誰だっていいの? 」

話が想像の斜上を突っ走る飛躍を見せたから、佑二は返す言葉が急には出て来

ない。

 

 

 


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