「それでね、和田くん」 呼び掛けられた不良少年は顔をあげると、衝撃的な話に打ちのめされて精気を失った 瞳を良文に向ける。 「僕は真弓子さんに正直に成り行きを説明したんだよ。いじめっ子のお兄さんが、偶 然クラスメイトだった事をね。それで、級友なのを利用して、二度と弟さんが一樹 くんを虐めないように話を付けてくれた事も報告したんだ」 「ああ、それならば任せてくれ。健二の奴はたっぷりと締め上げて、二度と下らぬい じめなどしないと誓わせたよ。それでも心配ならば、今度、もう一度、思い知らせ ておくさ」 確かに羨ましい事ではあるが、親友の幸運の邪魔をする気の無い不良少年は、改めて 弟に下らぬ虐めを行わせぬ様に注意する事を請け負った。
「それはありがたい。是非、そうして欲しい」 「任せておけ。でも、マジで羨ましいぞ。フミ」 美味しい思いを一人占めしている親友を、不良少年は恨めしそうに睨んだ。 (さて、これからの話を聞かせたら、卓也くんは、どんな顔に成るかな? ) 憮然としながら冷めたココアを啜る不良生徒に向かって、いよいよ良文は本題を持ち 出した。 「ところで、僕から真相を全部聞いた真弓子さんは、『それじゃあ、ヨシフミくんだ けじゃ無くて、頑張ってくれたクラスメイトの苛めっ子のお兄さんにも御褒美を上 げないと不公平よね』って、言っているんだよ」
「えっ… 」 彼の話の意味が上手く呑み込めない不良少年は、数秒間、目を見開いて固まった。 「ご、ご、ご、御褒美って… 」 「もちろん童貞卒業に付き合ってくれるって事なのだけれど… 」 日頃は突っ張っている級友の狼狽ぶりが面白い良文は、笑いながら言葉を繋ぐ。 「だから最初にまず和田クンはいつまで童貞を守るつもりなのか聞いたのさ。ほら、 もしも童貞卒業は大学に入ってからって決めているならば、残念だけれども真弓子 には断らなきゃいけないだろう? 」 そんなわけは絶対に無いと確信を抱きつつ、良文はいけしゃあしゃあと言い放つ。そ れまで呆然としていた卓也は、親友の断ると言う言葉に敏感に反応した。
「ちがう! そんなこと無い! 童貞なんて、一刻も早く捨てたい! 」 降って涌いたチャンスに目の色を変えた不良少年は、日頃の突っ張った態度をかなぐ り捨てて、目の前の親友に頭を下げる。 「マジ、たのむ。紹介して! お前の邪魔は絶対にしないから、俺をその、マユコさ んに会わせてくれ」 筋書き通りに話が進んだ事に満足した良文は、何度も頭を下げて頼み込む不良少年に 苦笑しながら紹介を約束する。 「それで、その、いつ会わせてもらえるのかなぁ? 」 会えるとなったら、もう気持ちが急いて止まらない卓也が目を血走らせて身を乗り出 す。
「今日、今から会いに行こう。それとも何かこの先に予定でも入っているのかい?」 「ない、例え何か予定があったとしても、何が何でもキャンセルだ! さあ行こう」 冷めたココアを一気に飲み干すと、不良少年は伝票を掴み勢い良く立ち上がる。 「まって、まってくれよ。ちゃんと今日、会わせてあげるけれども、まだ少し時間が 早いのさ。あと1時間ちょいで、真弓子さんの息子さんがスイミングスクールに出か けるんだ。僕らが出向くのは、その後に成る。どうしてだか分かるだろう? 」 「そうか… そうなのか。了解だ、あと1時間だな」
勢いに水を差されはしたが、それでも1時間後には童貞喪失のチャンスを手に出来る かも知れないと思った不良少年は、納得して再び喫茶店のソファに腰掛けた。興奮の 余り鼻血でも噴かないかと心配して親友の様子を窺いながら、良文はこれからの事に 思いを馳せていた。 (これで、なんとか対等に迫れると良いけれど、まあ、初日から勝負に成るとは思え ないよな) チェリーボーイを卒業してから何度と無く肌を合わせて来た美貌の若妻だが、経験値 の違いは歴然であり、セックスの時でも主導権は常に真弓子に握られっぱなしだった。
女性上位で欲情を満足させるばかりでは無く、射精のタイミングまでを支配されての セックスも、けして悪くは無いが、やはり美しい若妻を組み伏して荒腰を振るう豪快 なセックスを一度くらいは経験してみたい。でも、現実を見れば童貞卒業ホヤホヤの 中学生が、一児の母親でもある若妻を思う存分に鳴かせることなど不可能に思えた。 最後にはかならず真弓子に主導権を握られて、彼女の思った時に精を噴かされ続けて 来た少年が窮余の策として思い付いたのは親友を巻き込んでの物量戦略である。
(僕ひとりだから真弓子さんに太刀打ちできないならば、応援を呼ぶしか無い! ) 美貌の若妻を思うがままに凌辱する姿を夢にみながら、良文は目の前で興奮を隠せぬ 不良少年に期待を寄せている。 (和田くん、二人で協力して、行く行くは真弓子さんを思い通りに犯してやろうね) こうして小賢しい優等生が不良生徒を相棒に据えての、美貌の人妻凌辱計画は実行に 移された。
時間調整を終えて二人は美貌の人妻の待つマンションへと足を踏み入れる。エレベー ターに乗った直後に、ようやくここに到って思い付いたのか? 不良少年が不安げな 面持ちで口を開く。 「なあ、よく考えたら、真弓子さんて、人妻なんだろう? それじゃ、急に亭主が家 に帰ってくる事もあるんじゃないのか? それってかなりマズぞ」 「それならば心配はないよ、真弓子さんの旦那さんは今、中東に単身赴任中だそうな んだ。次に日本に戻ってくるのは、えっと2ヶ月ばかり先の予定だと言っていた」 良文の理路整然とした説明に納得した大柄の不良少年は、こんどは打って変わって黙 り込む。ようやく静かになった相棒を連れて、いよいよ良文は自宅の隣室のドアの前 に立つと呼び鈴を鳴らした。
『は〜い、どなた? 』 「串本です」 インターホンに向かって応答してから、数秒後に施錠が解かれる音が響き、次いで扉 が中から開かれた。 「まっていたわよ、さあ、上がってちょうだい」 勝手知ったる隣室だから、良文は何も気にせず玄関に身を滑り込ませた。一方、初め て真弓子との対面を果たした不良少年は、その溌溂とした美しさに早くも心を奪われ ている。 「おい、良文、あの人が着ているのって、バスローブじゃないか」 「うん、多分中身は裸じゃないかな?
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