「さあ、旦那さん、男が先なのだから、われわれも運命のカードを選ぼうじゃないか」 緒方に促されて正信は左のテーブルに歩み寄る、すでにルールを承知している先人たち が選んだ後だから残ったカードは2枚、その内の1枚に向かって緒方が先に手を伸ばす。 「残り物には福があると言うからね、新入会員に敬意を表して、最後の1枚が君の今夜 のカードだよ」 緒方の笑顔に見守られる中、正信は最後と成ったカードを手に取る。 (スペードの5か? いったいあの中の誰がハートの5を引いてくれたのかな? ) いずれも美女揃いのメンバーが姦しい中、正信は興奮を抑えて美しい人妻たちを見回し た。そんな彼の存念を緒方の言葉が遮った。 「そうそう、それから… 」 緒方は微笑みながら美紗子のほうを見る。 「もしも、偶然、自分の奥さんが同じカードを引いて部屋に来てしまったら、その時は すぐに2人で部屋を出て来てほしい。その場合には改めて、また全員で最抽選を行な うからね」
新参者の2人にパーティのルールを説明し終えた緒方は振り返ると、カードを手にした 男性陣に声をかける。 「さあ、紳士諸君は2階へ移動だ、くれぐれもカードと部屋の番号を間違えないでくれ たまえ。淑女諸君は、もう少しだけ待っていただく」 率先して緒方が部屋を出て階段に向かうので、正信は残してゆく美紗子に小さく手を振 ってから主催者に続き他の男性メンバーと共に部屋を出た。
(いったい、どんな人が来てくれるのかな? こりゃあ、楽しみだ) 割り振られた部屋に入ると、ひとりになった若者はようやく少し緊張がほぐれて、そっ と溜息を吐いた。夕食の際に、当然のことだが正信は対面に着座していた若妻達のひと りひとりを、それとなく吟味している。 (栗色の髪に派手な顔だちの人もいいけれど、あのショートボブでボーイッシュな人も 捨て難い、ああ、それとも、長いストレートの黒髪で切れ長な目の、あの人も… ) 華やかな夕餉を彩った美しい若妻たちを思い出しながら、彼は一夜妻の到来を心待ちに する。
コンコン… 「どっ… どうぞ」 待ちに待ったノックの音が響いたから、正信は廊下に面した入り口に歩み寄りドアを内 側に開けてあげる。 「うわぁ、ラッキー、新人さんに当るなんて、ツイているわ」 長い黒髪が印象的な若妻は、部屋に入ってくるなり抱き着いて来たから、さすがに正信 も面喰らう。自己紹介などすっ飛ばして彼にしがみつき、真っ赤なルージュに染まった 唇を押し付けて来るので、若者も積極的な人妻のふるまいに応えて情熱的なキスを交わ した。 互いに舌を絡め合い唾液を啜るディープなキスを楽しみながら、彼女が身に纏った夜間 飛行の香水の香りを肺一杯に吸い込み、もう正信は有頂天だ。ようやく唇を離した時に は美女の瞳は欲情に濡れ、若妻の甘く切な気な吐息は若者の獣欲を掻き立てる。しかし 、彼女は正信に抱き着いたままで振り向くと、いま入ってきたばかりの扉を睨み付けた。
「おねがいよ、ノックはなしにしてね、ここまできて御破算なんて言われたら、私、耐 え切れないもの」 彼女の呟きから、正信はさっき知らされたパーティのルールを思い出す。 (そうか、もしも、どこかで御夫婦の番号が一致したら、もう一度、抽選のやり直しな んだよな。それは、ちょっと嫌だなぁ… ) 抱き合ったまま、しばしドアを凝視していた二人だが、扉を隔てた廊下は静かなもので 、彼等の心配は杞憂に終わる。 「もう大丈夫、確定ね、うれし〜〜」 メンバーシャフルの可能性が無くなったと信じた美人妻は、あらためて正信の首っ玉に しがみつき彼の頬や首筋にキスを繰り返す。 「あら、ごめんなさいね、新人さんが相手だとわかって、ひとりで盛り上がってしまっ たわ。私は淑子よ、あなたは? 」 「はい、よ… いや、沢山正信です」 本名の横田正信ではなく、美紗子の嫁いだ沢山姓で、このスワップパーティに参加登録 をしたことから、今後の彼は沢山正信で押し通す必要がある。 「ふ〜〜ん、マサノブくんね、了解よ」 「よろしくお願いします。淑子さん」 おそらく相手は年上であろうし、自分はこの会では新参者であるから正信は敬語を使い 挨拶した。 「あらあら、今夜、私はあなたの女なのよ、敬語なんてやめて、それにトシコでいいか らね、わかった? マサノブ? 」 「はい、わかりました、じゃ無くて、わかったよトシコさん」 経験が乏しい正信だから、淑子の年齢はよく分からないが、その雰囲気からして従姉妹 の美紗子より年上だと察したので、名前にさん付けを怠らない。一方、フォーマルと言 うほどは堅苦しくは無いけれども、それなりの装いの美人妻は、くるりと振り返り彼に 背中を向けた。 「ねえ、チャックを降ろしてちょうだい、マサノブ」 「はい、喜んで! 」
しまりのないニヤ気面を晒しながら、両手を背中に回して後ろ髪をかきあげてくれてい る美女の背後に歩み寄った正信は、ゆっくりと目の前のチャックを引き下げた。 「あと、ブラのホックも外して、あら、上手ね。慣れているのかしら? 」 美紗子との愛欲塗れの情事を重ねて来たことが、この若者の年齢以上の落ち着きを齎し ている。彼は今夜一晩の妻となる女性のリクエストに応じて、手慣れた様子でブラの金 具を外し終えた。 「ありがとう」 するりと足元に崩れ落ちたワンピースの残骸を右足で器用に蹴飛ばした淑子は、残され た下着もさっさと脱ぎ捨てる。女盛りを迎えつつある裸身は官能美に溢れていて、傍観 者である正信は思わず生唾を呑み込んだ。美紗子に負けず劣らず色白な上に、まさに成 熟の時を迎えている女体が描き出す淫媚な曲線が若者の視線を釘付けにする。 若鮎を思わせるのが美紗子のヌードならば、目の前の若妻の裸は何と表現すればよいの であろう? 脂の乗り切った女体の線は、どこもかしこもなめらかで、肌理の細かな柔 肌はすぐにでも振るい付きたく成る逸品だった。そしてたわわに実った胸の膨らみは、 明らかに愛人である美紗子よりもボリュームがあり、手で隠すこともなく堂々と曝され た乳首や、少し大きめの乳輪が何とも艶かしい。そのまま視線を落として下腹部に目を やれば、黒く染めた絹糸を思わせる恥毛がひっそりと佇んでいるではないか。
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