その20

 

 

 

「なんか、凄い奥様ですね、是非お会いしたいです」

サンドウィッチを存分に平らげた正信が無邪気に言うと、緒方は小さな声で笑い出す。

「あはははは… 君はもう会っているじゃないか」

「えっ、あっ、その… まさか… 」

悪戯っ子を思わせる緒方の笑みを見て、正信は驚愕の表情を浮かべた。

「私の妻の名前は淑子さ、君が最初に寝た人妻は緒方淑子と言う名前なんだよ。だか

 ら君と私は下世話な言い方をすれば「穴兄弟」に成る。もっとも、このサークルに

 入ったからは、男性会員はすぐに全員、穴兄弟になるし、女性の方は「竿姉妹」に

 成ると言う寸法だ」

まさか目の前の初老の男性の愛妻を、思う存分に貪り悶絶に到たらしめたとは思って

いなかったから、正信は背中に冷たい汗が滴り落ちるのを感じた。

「あの、すみません、知らなかったもので… 」

「何を謝る必要があるのかな? 妻は妻で楽しんだだろうし、私は私で大いに楽しん

 でいる。なんの問題も無いだろう? 」

満腹に到った若者を促して、緒方は窓際に置かれたソファに腰を降ろす。

「どうだい? このサークルを気に入ってくれたかな? 基本的に2週間に1回、こ

 うした集まりの機会を設けているが、参加はあくまで自由だ。自分とパートナーの

 都合に合わせて、今後も参加出来たら加わってくれると嬉しいね」

「はい、喜んで参加させていただきます、あっ、もっとも、ミサ姉、じゃなくて美紗

 子さんの気持ちを聞いてみないと、確かな事は言えませんが」

先走る思いを懸命に抑えて、正信は正直に初老の男に応えた。

 

「それにしても、大したものだ。淑子は、あれで中々貪欲だし、セックスもたいそう

 タフなんだが、その淑子を乗り潰した上に、さらに沙苗さんまで貪るとは、いやい

 や、御見逸れしましたよ、横田くん」

柔和な笑みを浮かべつつ、返答に困る賛美の言葉を投げかけられて、正信は何と答え

てよいものか途方にくれた。

「いや、そんな、ただ俺、自分は、女はミサ姉しか知らなくて、いきなり魅力的な奥

 様とセックス出来たから、つい有頂天になって調子に乗ってしまいました」

「ははははは… このサークルに参加しているメンバーは、それなりに好色者が揃っ

 ているが、それでも君の様な性豪は見当たらん、これからが本当に楽しみだ」

整えられた庭を眺めながら、緒方は本当に愉快そうに笑い声を上げた。

「しかも、他の連中が昨晩は頑張り過ぎて、まだダウンしているのに、君は腹を減ら

 して、もう起きて下に降りて来ているのだから、これが愉快と呼ばず、なんと言え

 ばいいのかな?」

「えっ? 他のメンバーの方は、まだ眠っているのですか? それじゃ、俺、いや、

 自分だけ真っ先に、あのサンドウィッチを食べたのはマズかったですかねぇ?」

入会早々に礼儀を失した行為に及んだかも知れないと思い、正信は青く成る。

 

「かまわんさ、ここでは基本的には何ごとも早いもの勝ち、しかも既存の会員たち

 は、たいてい昼近くまで惰眠を貪るものだから、それまで我慢していたら君は飢

 え死にしてしまうだろう」

親子と言っても差しつかえない年齢差の若者のタフさに目を細めながら、緒方は彼

の行為がけして非礼では無いと弁護してくれた。その後、30分ほど緒方との会話

を楽しんでいると、不意に初老の主催者が視線を広間の出入り口に向けた。

「おやおや、忘れていたが、もうひとりタフな御仁が登場だ」

緒方の言葉から、てっきり男性会員だろうと思い、挨拶しようと立ち上がった正信

は色鮮やかなテニスウェアを身に纏い、ラケットを小脇に抱えた美女を見て驚きを

露にする。

「やあ、長峰さん、こちらは新人の… 」

「沢山正信、昨日の晩餐の席で紹介されていますよね、私、記憶力は悪くはありま

 せん」

緒方の親切な紹介を遮り、彼女はじっと正信を見つめる。仮にも主催者に対してぶ

しつけな口調だなと呆れる若者は、自分とほぼ同じ背丈の美丈夫を見つめて目を丸

くした。ざっくりと切りそろえられたショートボブの髪型だが、健康美にあふれる

彼女の端正な顔だちは正信の目を釘付けにするのは十分だった。

 

「あはは、相変わらずだね、景子さん」

無礼な美女の態度を軽くいなして、緒方は正信に目を向ける。

「よこ… 違った、沢山くん、こちらは長峰景子さんだ」

「よ、よろしくお願いします」

彼女の言う通り、昨晩正式に紹介されてはいたが、緒方の好意を無にすることなく

正信は礼儀正しく挨拶した。一応、新入りと言うこともあり軽くペコりと頭を下げ

たが、景子の方は冷やかな目で若者を見据えるばかりだった。

「一人で壁打ちでもして、澱んだ汗を流そうかと思って降りて来たけれども… 」

正信の挨拶を無視して、美しい長身の人妻が彼を見ながら言葉を繋ぐ。

「お前、テニスの経験は? 」

「へっ? テニスですか、大学に入ってから、じゃ無くて、その… ちょっとだけ

 やったことはあります」

学生結婚と言うことも無いでは無いが、夫のほうだけが学生と言う夫婦がスワッピ

ングに参加するのも妙だから、正信は慌てて口を濁す。そんな誤魔化しを不愉快に

おもったのか? 少し顎を引き射竦めるように景子は厳しい視線を投げかけた。

「ちょっとだけか、がっかりだな。まあ、それでも壁を相手にするよりはマシだろ

 う。お前、これから少し付き合え」

彼の返答も待たず、長身の美女は振り返ると、そのままスタスタと歩き大広間から

出て行ってしまった。

 

「やれやれ… 」

苦笑いの緒方が小さく溜息を漏らすから、正信が困惑して初老の男を見つめる。

「実は景子さんは、このサークルの活動には乗り気じゃないんだよ。でも、彼女の

 旦那さんが、熱心な会員なもので、景子さんは嫌々ながら参加しているのさ」

他の人妻たちが新入会員の自分に対してたいへん友好的だったことから、景子の冷

徹な態度は余計に正信を驚かせている。そこで彼は心の中で感じた小さな疑念を口

にした。

「あの長峰景子さんて、どこかで見たような気がするのですが? 」

「おそらくスポーツ新聞かテレビのスポーツコーナーじゃ無いかな? 旧姓の西島

 さんだった頃の数年前まで、彼女は国内ではトップクラスのアマチュアのテニス

 プレーヤーだったからね」

緒方から説明されて、ようやく正信は彼女の事を思い出した。

 

 

 

 


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