その23

 

 

 

「いやいや、まだ食べ始めたわけではないから、別に遅刻ってことも無いさ。さあ、

 君達も席につきたまえ」

この妖しく心踊るサークルの主催者にして、スポンサーの緒方は笑顔で新規加入の2

人を招き入れた。すでに肌を合わせて馴染みと成った淑子と沙苗とは、それぞれに牝

の媚びを含んだ妖艶な笑みを浮かべて軽く会釈を交わすし、他の2人の美人妻たちも

、昨夜の正信の大暴れを淑子か沙苗から聞いているのか? 増々興味津々と言った風

情で若者を迎えた。

ただひとり景子だけは、ちらりと正信達に目をやっただけで何のリアクションも示さ

ない。遅参した彼等がテーブルに付いたのを見計らい、使用人と思われる男達が夕食

のコースの皿を広間に持ち込んで来た。緒方の配慮なのか? 他の男性陣のディナー

のメインディッシュは、牛のフィレステーキだったが、正信の前には分厚く脂の乗っ

たサーロインステーキが配られて、仄かに湯気を揺らせた肉の塊は若者の胃袋を強く

刺激した。他のほとんどのメンバーが、優雅にディナーを楽しむ中で、昼間のテニス

で消費したエネルギーを補充したい正信は、あれよあれよと大きな肉の塊を切り分け

て、次々と口に放り込む。

 

(うま! 檄ウマ! 馬鹿ウマ! くぅぅぅぅぅ、最高! )

けして貧乏学生と言うわけでも無いのだが、所詮は親の脛を齧る身分なので、たまに

食べるステーキと言えばファミリーレストランの御手軽でやや筋ばった代物だった。

しかし、今、咀嚼する香ばしいサーロインは適度な歯ごたえが心地よく、しかも噛み

締めるほどに溢れる肉汁の旨味が咽を滑り落ちると、もう正信はたまらない。彼だけ

は他のメンバーの倍を上回るボリュームのステーキをあてがわれていたが、それでも

メインディッシュを食べ終わるのは正信が一番早かった。旺盛な食欲を見せる若者の

姿を、昨晩の一夜妻として情を交わした2人の美女はうっとりと眺め、男性の会員は

皮肉な笑みを浮かべるか、肩をすくめて溜息を漏らしていた。

 

「まったく、もう、恥ずかしいわ」

夕食が終わっても昨晩とは異なり、すぐには隣室でのくじ引きとは成らなかったから

、サークルのメンバー達はテーブルを離れると、思い思いに窓際のソファやバルコニ

ーに場所を移して歓談を続ける。正信も美紗子と共に壁際のソファへと移動した。

「なにが恥ずかしいのさ? 」

「なにがって? ショウちゃん、自覚が無いの? 放っておいたらお肉だけじゃ無く

 てお皿やテーブルまで食べちゃいそうな勢いだったじゃない。このいやしんぼ! 」

確かに他のメンバー達は、高級な料理の味をゆっくりと堪能しながら、思い思いに夕

餉を優雅に楽しんでいるようにも見えた。しかし、一刻も早く体力の消耗を取り戻し

たかった正信は、他の会員からの呼び掛けにの生返事で応じるばかりで、黙々と贅沢

な料理を胃袋のおさめる作業に勤しんでいた。

「腹が減ったら戦は出来ないだろう? 今夜に備えて、ここは腹一杯にしておかなきゃ」

「ふ〜〜ん、そんなに今夜もお楽しみなの、ショウちゃんのH! 」

「いっ、いてぇ、なにするんだよ、ミサ姉」

太股を思いきり抓られて、正信を抗議の声を漏らした。

「ふん、知らない! ショウちゃんの馬鹿」

理不尽な言葉を投げかけて美紗子は立ち上がると、そのまま他のメンバーの元へと去っ

て行った。

 

「ははははは… 恋女房にはフラれたね」

万事事情を心得ている緒方が、入れ代わりに彼の元に歩み寄って来た。

「まったく、何を怒っているんだか? ワケわからないです」

「いやいや、最初は皆、あんな風に多少は不安定に成るものさ。彼女のそのうちに慣れ

 るから心配はいらない」

さっきまで美紗子が腰掛けていた場所に、緒方が腰を降ろした。

「ところで、君にまたまた、頼みがあるんだよ」

昼間、元天才テニスプレーヤーとの手合わせを強いられた正信は、すこし身構えて緒方

の次の言葉を待った。

「今晩の相手は、是非、あの景子さんにして欲しいのさ」

「えっ、でも、今夜もまた、あのトランプでの抽選で相手が決まるんですよね? それ

 じゃ勝手に相手をきめることは出来ないでしょ? 」

馬鹿正直な若者の反応に、緒方は苦笑で応じた。

「いやいや、考えてもみたまえ、隣の部屋にカードを置くのは誰かな? うまくやれば

、カードを用意する私だけは、組み合わせの抽選をコントロール出来るじゃないか」

なるほど、カードをテーブルに配置するのが緒方であれば、ある程度は小細工も可能だ。

 

「昨晩、最初に君と肌を合わせたのが、主催者である私の妻だったことを、君は偶然だ

 と思っていたのかい? それは感違いだ。あれは淑子に強請られた私が、ちょっと細

 工したのさ」

悪戯がバレた子供のように無邪気な笑い顔を見せて、緒方がウインクする。

「今夜は昨晩と違って、女性の方が先にカードを引き部屋に向かう。君は隣に移動した

 ら私の側を離れないでくれたまえ」

段取りを伝え終わると、正信の返事を待つ事なく立ち上がった緒方は、広間の思い思い

の場所で談笑する男女に向かって呼び掛けた。

「お待たせしました、それでは皆さん、隣に場所を移して抽選会といたしましょう」

ちらりと若者の様子を見た後に、緒方は率先して部屋を出るから、正信も慌てて立ち上

がり初老の男を追い掛ける。隣室には昨日と同じく部屋の左右の壁際にテーブルが2つ

置かれていて、やはり同じく、それぞれに6枚のトランプのカードが数字を隠し伏せて

置いてあった。

「さあ、今宵はまず、女性陣からカードを選んでもらいましょう」

緒方の呼び掛けに従い、6人の美人妻たちは、思い思いにテーブルに歩み寄り争うこと

もなくカードを選ぶ。いつに無く真剣な面持ちで女性達の選択を見守った緒方は、華や

かに姦しく部屋を出て行く女性陣の喧噪にまぎれて、そっと正信の元に歩み寄った。

 

「右から2番目、スペードの3だよ、間違えないでくれたまえ」

それとなく正信の耳もとで、彼が取るべきカードを緒方が囁いた。他の男性メンバーは

、思い思いに馴染みの女性達の退室を見守っており、誰も主催者の初老の男性と若者の

良からぬ会話には気付かない。最後のひとりの女性が部屋を出てからしばらく待ち、そ

して頃合を見計らった緒方はにこやかに正信を見つめた。

「さて、今度は我々がカードを選ぶ番だ、さあ、ここは新入会員の沢山くんに一番槍の

 栄誉を託そう、沢山くん、好きなカードを選びたまえ」

白々しい芝居だが、あの景子と一夜を共に出来るなら、どんな馬鹿げた御芝居でも乗る

覚悟の若者はテーブルに歩み寄り、さっきの緒方の指示に忠実に従い右から2番目のカ

ードを手にした。

(本当だ、本当にスペードの3だ! )

彼に続いて順番に他の男性会員がカードを選ぶ中で、緒方は他の者に気付かれぬ様に注

意を払いながら若者を見て満面に笑みを浮かべて頷いた。

「さあ、皆さん、それぞれのカードの番号に従いお部屋の方に移動して下さい」

緒方に促されて部屋を出る正信の心は踊り、改めて初老の男の粋な計らいに感謝した。

 

 

 

 


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