その29

 

 

 

「もう、やめてくれ、このままでは、本当にどうかしてしまう」

これまでに経験の無い鮮烈な快美に翻弄されて、景子は自分でも信じられない様な

台詞を口にするほど追い込まれている。誇り高き自分が、よりによって男などに組

み伏され、何度も桃源郷に放り込まれた挙げ句に、ついには赦しを求めて哀願する

とは… 昨日までの自分であれば、たとえどんなに辛くても、絶対に口にはしない

台詞が、なんの抵抗もなくポロポロと漏れ出て来る中、彼女は急速に開花する己の

官能を持て余している。

「可愛い事を、言ってくれますね、嬉しいですよ景子さん」

才能豊かなテニスプレーヤーとして並みいる強敵を撃破していた頃から、彼女は孤

高の天才と評価されていて、これまで男に可愛いなどと言われた事など無い。だか

ら最初は面喰らったが、その言葉の意味が胸に染み通ってきたときに、ついに彼女

をギリギリのところで支えていた矜持のつっかえ棒がぽっきりと音を立てて折れて

しまった。

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ… 」

プライドに賭けて、金輪際、甘い声など出すまいと頑張ってはみたが、その忍耐が

逆に彼女の欲情を手に負えぬほど膨れ上がらせているのは皮肉なことだ。マグマの

様に煮えたぎる劣情の塊は、ついに彼女の理性の堰を決壊させた。

「ひぃぃ、くやしい、でも、これ… あっ、いい、もっと、きゃぁぁぁぁぁ… 」

「ようやく調子が出てきましたね、それじゃ、本腰を入れますか」

若者の台詞は景子を驚愕させるのは十分な破壊力を秘めていた。

 

(本腰って、これまでは本気じゃ無かったって言う事なのか? それじゃ、本気に

 なったコイツって、いったいどう成るんだろう?)

その答えはすぐに若妻に示される、明らかにギアが一段上がった若者の強烈な突き

上げを喰らった景子は、最初の一撃で気が遠くなったが、煽る様に腰を前後させる

正信の責めが、彼女に安易な気絶を許さない。荒々しい律動の続くなかで、ひと突

きごとに軽いアクメに追い込まれる景子は、自分でも気付かぬ内に若い獣のような

男にあわせて、円やかな尻をうねらせていた。

(いいぞ、くぅぅ、なんてよく絞まるマ◯コなんだ… )

無益な矜持を投げ捨てて快楽の荒波に身を任す美しい若妻の変化に戸惑いながらも

、正信は味わいを深めた彼女の肉壷の甘美な締め付けを思う存分に堪能する。一方

、プライドを失ったかわりにこの世のものとは思えぬ快楽を手に入れた美人妻は、

蹂躙される蜜壷から溢れ出す強烈な快美を貪り、躯の芯までドロドロに溶ける愉悦

に溺れてよがり泣く。このまま貫かれ続けては発狂してしまうと怯えた景子は、最

後の気力を振り絞り痺れた両手をもちあげると、目の前の男の胸を全力で押し戻す。

 

「まってくれ、このままでは本当に頭がへんになってしまう、おねがいだ、もう許

 して、そうだ、口で… 口でするから、マ◯コはもう許して」

気高い美人妻の必死の懇願は正信の心を揺り動かす。

(口かぁ… このままもう一度最後までヤルのも良いけれど、フェラチオなんて真

 っ平だと言っていた景子さんの口を犯すのも魅力的だな)

少しの間、迷った挙げ句に若者は隆々と勃起した己の肉棒を、未練を振払う様に美

貌の若妻の肉壷から抜き去った。

「ひぃぃ… 」

ようやく女陰を支配していた圧迫感が去ったが、その後に襲い掛かってきた絶望的

な空虚感が景子を困惑させる。あれほど開放を望んでいたのに、いざ自分の中から

若い獣の欲情棒が引き抜かれてしまうと、まるで心の中にぽっかりと穴が空いたよ

うな虚しさが、美しい若妻を悩ませた。

 

「それじゃ、口でお願いしますよ、景子さん」

苦痛なのか快楽なのか分からぬ混乱から逃れるために、おもわずその場凌ぎで口走

った言葉だったが、いざ自分の噴いた愛液で汚れ滑り光る若者の勃起した男根を目

の前にすると、さすがに景子は怯んでしまう。だが目の前に突き出された勃起から

漂う性臭は、淫に溺れることを覚えた美女の脳髄を刺激して、むしゃぶり尽きたい

衝動にも駆られている。無惨にも砕け散った矜持の欠片がやめろとか細い悲鳴をあ

げるが、そんな心の中の声を無視して、ついに彼女は顔を正信の股間に向けて傾け

た。

(臭い、それに汚い、でも… 素敵)

昨日の自分であれば、こんなに汚れてグロテスクな男性器を口にするなど、とんで

もなかっただろう。そんな破廉恥な行為を強いる男がいれば、迷わず頬を平手で思

いきり張り倒していたハズだ。しかし、今の彼女は追い込まれたとは言え、自ら顔

を寄せて若者の勃起に唇を押し付ける暴挙に及んでいた。

心の中で破砕されたプライドが小さく悲鳴を上げているが、そんな屈辱感すら今の

景子には淫心を掻き立てる燃料と化している。これまでの人生では、情けない夫に

懇願された時ですら、鼻で笑って退けたフェラチオだった。だから誰に教わったワ

ケでも無いのに、欲情した牝の本能に従い彼女は愛液まみれの男根にキスを繰り返

したのちに口を大きく開けて、すっぽりと咽の奥まで呑み込んで見せた。

(ああ、臭くて汚いケモノのチ◯ポを、しゃぶっているんだ)

鼻孔にまとわりつく生々しい牡の性臭が、彼女の卑しく惨めな境遇を強く意識させ

る一方、口に含むことにより、あらためて若者の剛直の硬さと熱さを思い知らされ

た景子は、不器用ながらも舌先を絡めて含んだ怒張を愛撫する。

(たのむ、このまま、このままイッて、口の中で構わないから、射精してちょうだい)

蜜壷を解放されたことで、ようやく少しだけ理性を取り戻した景子は、淫の愉悦環

状からの開放を求めて熱心に口にした男根をしゃぶり舐め回す。生まれて初めての

フェラチオではあるが、どう振舞えば男が気持ちを高めて射精に到るかは、心の奥

に閉じ込めていた牝の本能を開放することで分かっている。少し顔を持ち上げて、

唇で亀頭をじんわりと絞めながら舌の先で鈴口を擦り、さらに口から余った剛直の

茎には指をからませしごく景子の有り様を、正信は満足げに見下ろしていた。

 

(あの生意気な奥様も、ひと皮剥いたら、やっぱり女なんだなぁ… )

昼間、テニスコートで度胆を抜かれて、少しだけ芽生えていた自信を木っ端微塵に

された若者は、江戸の仇を長崎で、では無いものの、昼間のカリをきっちりと返し

たことに気分を昂らせた。今では愛人と化した美しい従姉妹を始めとして、昨晩情

を交わした二人の若妻に比べても、明らかに景子のフェラは技巧に劣る。しかし、

ぎこちない口での愛撫は、景子の個性と相まって若者に勝利の喜びを齎していた。

 

彼女にとって生涯初のフェラチオだとは夢にも思ってはいなかったが、不馴れな口

での愛撫から経験は乏しいと察した若者は、誰にでもしゃぶりつく淫売では無く、

誇り高い元天才テニスプレーヤーが自分に屈して股間に顔を埋めている姿を見て心

が昂るのを抑え切れない。そんな勝利に酔い痴れる若者の胸中など察する由も無い

景子は、ただひたすら愉悦の地獄からの脱却を求めて唇を窄め美しい顔を前後させ

ていた。

 

 

 

 

 


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