その31

 

 

 

「ぷは〜、生き返った」

唇の端に残った麦酒の泡を行儀悪く手の甲で拭いながら、正信は満足げに溜息を漏

らす。そして、もう一度、缶に口を付けて一気に残りのビールを咽に流し込んだ若

者は、ゴミ箱に空き缶を投げ捨てると緒方の方に目を向けた。

「あの、ここに入ってきたときに、まっていたと言われましたが… 」

「そうさ、昨晩の君の行動から推察して、一戦終えて首尾よく景子くんを撃沈した

 ならば、咽の乾きを癒すためにホールに降りて来ることは容易に想像が付いたか

 らね」

人並みはずれた馬力のことを完全に読み切られていた事が恥ずかしくて、正信は照

れ笑いしながら頭を掻いた。

「さあ、咽の乾きもおさまったなら、行こうじゃないか」

緒方はパイプの中の煙草の葉の燃えカスを灰皿に捨てると、そのまま立ち上がり部

屋の出入り口に歩き出す。

「あの、行くって、どこへ行くのですか? 」

戸惑う若者の顔を見つめた緒方は、これからの悪企を思い破顔する。

「もちろん、君の偽りの奥様のところさ。時間的に見れば、そろそろ佳境だろうか

 らね」

 

しばらくは何の事だか分からなかったが、偽りの妻と言うのが従姉妹の美紗子の事

だと思い当たった若者は驚きで目を丸くする。

「あのミサ姉… じゃ無くて美紗子の所の事ですよね? 」

事情は全部知っているのだから、敢えて言い直す必要は無いのだが、それでも用心

の為に正信は美しい従姉妹を呼び捨てにした。

「もちろん、そうさ。さあ、行こう」

なぜ、こんな時間に美紗子の元に足を運ぶのか? よく分からぬまま、正信は初老

の主催者に急かされて、慌ただしく階段を昇って行く。最前までの情交の末、大悶

絶に到った景子が眠る部屋の前を通り過ぎた緒方は、奥から2番目の部屋の前で立

ち止まると、ノックも無しに扉を開き中に足を踏み入れた。

「やあやあ、調子はどうかな? 」

多少の気後れはあるが、緒方が明るく話し掛けながら部屋の中に消えたのを見た若

者は、びくびくと様子を窺いつつ初老の男の後に続く。

 

(あう、ミサ姉! )

最初に目に飛び込んだのは、愛おしい従姉妹が大股を開き、見知らぬ男に犯されて

いる姿だった。全裸でゆさゆさと揺すぶられる美紗子の顔には法悦を感じさせる笑

みが浮かび、彼女の両手は、のしかかる男の背中に回されて、しっかりとしがみつ

いているではないか。分かっていたことだが、自分が他の人妻たちと肉の交わりを

楽しむ間、彼の愛人の美紗子も他の男に股を開いている。

知識としては理解していても、実際に美紗子が他の男に組み伏されている光景は衝

撃的で、正信はしばし言葉を失い立ちすくむ。だが、若者を驚かせたのは美紗子と

他の男とのセックスの情景だけでは無かった。なんと、ベッドの脇に置かれた長椅

子には他に2人の男が鎮座していて、美紗子と別の男が交わる姿をウイスキーのグ

ラスを手に眺めているではないか。

(うわ、これって、4Pなのか? でも、実際にセックスしているのはミサ姉たち

 二人だよな。あとの二人は見学者なのかな? 」

緒方や正信と同様に白いガウンを身に付けた傍観者たちは、新たに押し掛けてきた

彼等を笑顔で歓迎する。

 

「やあ、緒方さん、それに美紗子さんの御主人、奥様は素晴らしい女性ですね」

ソファの右がわに腰掛けた赤ら顔で小太りの男が、気取った様子でウイスキーのグ

ラスをひょいと持ち上げて声を掛けてくる。なんと応じて良いものやら、途方にく

れた正信にかわって緒方が口を開いた。

「どうだい、関口さん? まだ済んでいない方はいるのかな? 」

「いや、ちょうど吉岡さんが3人目だよ、私と海野さんは楽しませてもらったから

 ね」

海野と呼ばれた細面で髪の薄く成った男は、下卑た笑顔で頷いた。いまひとつ状況

が呑み込めない若者は呆然とした顔で初老の主催者を見た。

「実は、今夜は女性の新人会員さん、つまり美紗子さんの歓迎会を、我々のサーク

 ルの有志で開催したのさ。もちろん事前に君の奥さんには承諾を得たし、男性陣

 がここに集まったことで溢れた奥様達の相手は、私の使用人連中が務めているか

 ら、そっちの方の心配もいらないよ」

緒方の説明は正信を大いに驚かせた。

「それじゃ、ミサ姉… じゃ無くて美紗子は、今夜は皆さんと? 」

「そうなんだ、事後承諾になったことはお詫びするよ」

緒方に代わり、恰幅の良い関口が笑いながら頭を下げた。美紗子と盛っている吉岡

を除いて、緒方と海野も合わせてペコリと頭を下げる。

 

「奥様はたいへん物わかりがよくて、我々の申し出を快く認めてくれただけで無く

 、ひとりと交わっている時に、他の者が部屋に留まり眺めることまで許してくれ

 たんだ」

淫らな空気に酔ってニヤけながら状況を説明する関口の言葉に、若者は妙に合点が

行き頷いた。

(そう言えば、ミサ姉は、俺と二人で出かけるときには、やけに露出が著しい服そ

 うを好んでいるものな。潜在的にひとに見られたいっていう欲求があっても、不

 思議じゃ無いや)

少し身を屈めただけで下着が露になるミニスカートや、胸元がギリギリまで露にな

ったシャツを身に付けて、行き交う若い男の視線を奪うことに悦びを覚え、共に歩

く正信を慌てさせる事が少なく無い美紗子の性癖を思い出して、若者は苦笑いを浮

かべるばかりだ。

 

「ところで、えっと、沢山くんだったかな? 君は今夜は景子さんの御相手だった

 ハズだが、やっぱり終わったらさっさと出て行けと言われて、部屋を追い出され

 た口かな? 」

さもありなんと頷きながら、今度は海野が話し掛けてくる。

「いえ、あの、景子さんならば、ちょっと無理をしすぎてしまって、気を失われて

 います」

誇り高い美人妻との激しい情交を思い出して、こんどは正信は頬を緩めた。

「なんと、あの高慢な奥様を犯り込めるとは、いやいや、まったく将来有望な新人

 の登場だ」

おそらく過去に何か失態があって、傲慢な景子から罵倒された事があるのであろう

、海野は腕を組み唸りながら若者を見つめた。四方山話で盛り上がるギャラリーを

他所に、ベッドの上での肉弾戦が佳境を迎えた。

「くうぅ、だめだ、もう、持たない! 」

「いいわ、来て、そのまま出して、あっ、あひぃぃ… 」

周囲の喧噪など耳に入らぬ肉欲に溺れたカップルは、共に絶頂への階段を駆け上が

ったようで、彼女を貫く吉岡の尻がビクビクと震えると同時に、組み付されていた

美紗子も艶っぽい悲鳴を張り上げた。

 

 

 

 

 

 


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