その36

 

 

 

 

「あうぅぅぅぅぅ… すごい、奥に… おなかが、あひぃぃ… 」

自分で腰を振ることにより、肉壷にのさばる雄根の破壊力は増してしまうのだが、そ

れでも一旦、火の付いた官能はたちまち巨大な火柱と成り高く炎を吹き上げるので、

景子は自分でも呆れるような牝の媚びた声を部屋一杯にまき散らすばかりだ。そして

下になった正信が両手を伸ばして彼女の胸の膨らみを弄び始めると、もう景子は何も

考えられなくなる。

乳房を嬲る若者の両手に自分の掌を重ね、艶っぽい嬌声を漏らしつつ腰をうねらせれ

ば、昨晩と同じ爆発的な愉悦の濁流に呑み込まれた美人妻は若者の上で淫らに舞い狂

う。昨晩と同様になんども無我の境地に追いやられた後に、景子は官能の炎に身を焦

がしながら、ついには昨晩と同様に深い悶絶に到った。

 

 

「やあ、おはよう、と、言っても、もう2時過ぎだがね」

シャワーを浴びたあとで身支度を整えた正信が階下のホールに顔を出すと、半分程に

なった黒ビールのグラスを掲げて緒方が陽気に話し掛けて来た。

「いままで、ずっと寝ていたのかい? 」

まさか、そんなわけはあるまいと言わんばかりの顔で初老の男が尋ねて来る。

「いや、その、朝、起きた途端に景子さんが… 」

昨夜の好淫の疲れなどモノともせず、朝日の中で早くも美貌の元天才テニスプレーヤ

ーとベッドで一戦済ませて来たと語る若者を、緒方は目を丸くして見つめた。

「いやはや、君のスタミナと言うか、馬力には敬服するしかないね。それじゃ、さぞ

 や腹も減ったことだろう」

緒方の指示を受けた使用人が、山盛りにサンドウィッチを乗せた皿を持って来てくれ

るから、正信は御礼の言葉もそこそこに、ハムチーズサンドにかぶり付く。若者が見

る見るうちにサンドウイッチを空っぽの胃袋に放り込む様を嬉しそうに眺めていた緒

方は、正信が最後のひとつを頬張るまで待ち声を掛けて来る。

 

「まだ足りないかな? それならば急いで追加を作らせるが… 」

「ムグぅ… いいえ、大丈夫です、少し食べ過ぎなくらいですから」

これも使用人が持って来てくれたぬるめのカフェオレで咽の詰まりを押し流した若者

は、満足そうに溜息を漏らすとサークルの主催者の初老の男にむかって満面の笑みを

見せる。

「毎度のことで申し訳なく思うのだが、またまた君のお願いがあるのだよ… 」

用意されたカフェオレを飲み干した若者に、緒方はへりくだって言葉をかける。

「なんなりと、お申し付けください。それだけの借りがありますからね」

2晩で3人、美紗子を含めれば4人の若妻との酒池肉林を楽しんだ正信は、彼にそん

な幸運を齎してくれながら謙虚に振舞う緒方に尊敬の念すら感じているから、可能で

あればどんな願いも聞き届ける腹積もりなのだ。

「そう言ってくれると、少し気が楽になったよ。実は昨晩の君の奥さん、いや、従姉

 妹の美紗子さんに対して有志が行なった歓迎パーティなんだが、あぶれた1人のメ

 ンバーが、文句を言い出して困っているのだ」

苦りきった顔で緒方は黒ビールのグラスに口を付けた。

「あれ、でも、昨日、あの部屋にいたのは緒方さんと、俺と、あと3人で5人ですよ

 ね。ならば昨晩、参加し損ねたのは2人ではありませんか? 」

正信の的確な指摘に緒方は少し驚いたような顔で頷いた。

「うむ、たしかにあぶれたのは2人なのだが、その内のひとりは景子さんの旦那さん

 で、長峰さんという名まえなのだが、彼等夫婦は旦那さんの仕事の都合で、今日の

 夕方には帰る予定になっていて、今夜のパーティには物理的に参加不可能なんだよ」

景子が今夜は不在と知り、なぜ彼女が今朝あんなに積極的に迫ってきたのか? 合点

が行った若者は内心で頷くと同時に名残り惜しい気持ちを持て余す。

 

「そうですか? それで、その残ったひとりの方は、なんとおっしゃっているので

 す? 」

「いやぁ、昨晩、あの歓迎パーティに参加した他の3人が、美紗子さんの素晴らし

 さを吹聴したもので、あぶれた滝川さんは、大いに残念がり、かつ憤慨されてい

 んだ」

困った顔の緒方は、小さく溜息を漏らして首を振る」

「そこで、滝川さんは、今晩、あらためて美紗子さんの第2次歓迎パーティを開い

 て欲しいと言い張っているのさ。景子さんと、旦那さん、それに海野さんの御夫

 婦も御主人の仕事の都合で今夜はもう居ない。だから昨晩のメンバーの中で海野

 さんと滝川さんが交代して、またまた4人で美紗子さんを歓待する事になるのだ

 が… 」

海野は是非を問うように正信の顔を見つめる。

「それは一向にかまわないのですが、残留する男衆がみんなミサ姉の歓迎パーティ

 に参加してしまうと、取り残された女性陣から苦情が出ませんか? 」

新参者の美紗子ばかりがちやほやされると、後々彼女が嫉妬されて居心地が悪くな

るのでは無いかと心配して若者は眉を曇らせる。

「うん、その通り、いや、君は頭の回転が早いから、話も早くて助かるよ」

もちろんお世辞に過ぎぬと分かってはいるが、それでも誉められて気分を害する天

の邪鬼では無い正信は微笑みながら、緒方の次の台詞を待つ。

「そこで君の頑張りに期待するのだよ」

「えっ、まさか、俺に今夜、4人の女性と同衾しろって言うのですか? 」

若者の狼狽に緒方は笑って頷く。

「いやいや、そこまで無茶は言わないさ。私の妻の淑子は、あれでレズっ気もある

 ので、妻は我々の方のパーティに参加させる。だから、君が今夜、御相手を務め

 るのは、吉岡さん、関口さん、それに滝川さんの奥さんの3人さ」

 

4人が3人に減ったと言っても、それでも彼ひとりで相手をするのは骨が折れるこ

とになる。だが、このサークルに参加して以来、飛躍的に牡としての自信を深めて

いた正信は、あるいは3人相手の4pでも無難に乗り切れるのではないか? と、

胸踊らせる始末だった。

「相手の御婦人たちが、それで良いよと、おっしゃって下さるならば、俺の方には

 異存はありません」

そのメンバーから景子が欠落しているのが何とも残念だが、3人の若い人妻と同時

にベッドを共にする刺激的な体験を思うと、正信は好色な笑みを堪え切れない。

「うんうん、君ならばきっと、そう言ってくれると思っていたよ。ありがとう、横

 田くん」

「いえ、こちらこそ、本当に素晴らしい体験をさせていただきます。とても嬉しい

 ですよ緒方さん」

二人は年代を超えた友情を持ち、互いに感謝しながら握手を交わした。若者を首尾

よく説得したことで安堵の表情を浮かべた初老の主催者と正信は、その後、四方山

話に花を咲かせた。すると、日が翳り始めた頃になって、他所行きの服装を整えた

景子が夫と共にホールに入ってくる。

 

 

 

 


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