その43

 

 

 

 

近所のコンビニで買い求めた幕の内弁当とインスタント味噌汁を平らげて、玄米茶

を啜る正信の耳に、玄関の方からガチャガチャと耳障りな金属音が聞こえた。

(またか、まったくミサ姉ときたら… )

いつもの様に呼び鈴を鳴らす手間を惜しんだ美紗子が、なんの遠慮も無く若者のマ

ンションのリビングに乗り込んできた。

「また、そんな出来合いのモノを食べている! 料理のレパートリーは豊富なんだ

 から、ちゃんと自炊しなさいよ」

「べつに手を抜いているわけじゃないさ、でも時々は自分で作ったモノ以外の食事

 を楽しみたくなるんだよ。自分ひとりの為に、わざわざ唐揚げを作ったりトンカ

 ツを揚げたりするのも無駄が多いからね」

ここで、正信は皮肉な目を美しい従姉妹に向ける。

「それに、どこかの誰かさんは主婦だと言うのに、ちっとも手料理を振る舞ってく

 れないし… 」

「あはははは、自分よりも料理が上手な男に、手料理なんておこがましいわ。それ

 よりも、ねえ、ショウちゃん、お腹空いた〜 」

事前に正信の部屋の合鍵を手に入れていた美しい従姉妹は、夫が商社マンで国内外

への出張が多く頻繁に家を空けるのを良いことに、こうして週に2〜3回は若者の

マンションの部屋に転がり込んでいた。

 

「今日は、なんとなく、冷中華が食べたい。さあ、ショウちゃん、昔、受験勉強で

 助けてもらった恩義を返すのは、いまよ! ハラペコな美紗子様に美味しい冷中

 華を振る舞いなさい! 」

「はいはい、わかりましたよ、ミサコ様」

色々と言いたい事はあるが大学受験の準備中に、脳味噌まで筋肉で出来ていると周囲

から酷評された運動馬鹿を、僅か半年余りで志望大学の合格圏内まで学力を向上させ

たのは明らかに美紗子のスパルタ家庭教師のおかげだったから、その件を持ち出され

ると若者は反論が難しい。やむなく正信は立ち上がると台所へと足を向けた。

(えっと、スープはこの間、作り置きしたのがまだ残っているから、あとはハムと卵

 と、それから胡瓜、木耳、おっと、黒胡椒は、まだあったかな? )

たっぷりと水を張った鍋を火に掛け、沸騰を待つ間に冷中華の具材を次々に冷蔵庫か

ら取り出した若者は、次いで二口コンロの空いた右側にはフライパンを乗せて、こち

らも軽く炙りはじめた。

「は〜や〜く〜、おなかがすいた、おなかがすいた、おなかがすいた〜ぞ! 」

「そんなに急に出来るかよ、カップヌードルじゃあるまいし… もしも、来てすぐに

 食べたいならば、前もって電話しろって、いつも言っているじゃないか」

とき玉子をフライパンに流し込みながら、正信は理不尽な要求を繰り返す美紗子を軽

く睨んだ。

「だめだめ、だって、あらかじめ来るなんて言ったら、ショウちゃん、逃げちゃうか

 も知れないもん」

「にげね〜よ、ちゃんとメシくらい用意するから、こんどは、そんなに腹を減らすま

えに、ちゃんと電話してから来いよな」

なんだかんだと文句を言いながらも、正信は手際良く料理を仕上げて行った。

 

 

「ふぁ〜、おいしかった、やっぱり冷中華はショウちゃんのに限るわ」

一人前を軽くペロリと平らげた美人妻は、猫舌なことから熱い玄米茶ではなく、よく

冷えた麦茶で咽を潤おし満足げに溜息を漏らした。

「はいはい、お粗末さまでした… 」

苦笑いを浮かべた正信が食卓を片付けていると、美紗子は四つん這いでテレビの方に

近付いて行く。

「ねえ、ショウちゃん、DVDって、どうやって見るんだっけ? 」

台布巾でテーブルを拭く若者に向かって、美紗子はプレーヤーを睨みながら問いかけ

た。

「この前、ちゃんと教えただろう、まずセレクターでDVDを選び、それからチュー

 ナーの方を… 」

「え〜〜〜い、面倒だ! 私は、このDVDをショウちゃんに見せたいの! わかっ

 たら、さっさと準備してちょうだい」

まっさらな無地の円盤を手渡された若者は、ひとつ小さく溜息を漏らす。

「ミサ姉ってば、俺なんかよりも遥かに頭が良いくせに、事が機械関係に成ると、な

 んでこんなに物わかりが悪くなるんだい? 」

「ふん、なによ偉そうに、たかだかDVDプレーヤーが操作出来るくらいで、そんな

 に威張らなくてもいいんじゃない? 」

喧々諤々とやり合いながらも正信は手早くDVDの再生の準備をする。

「はい、これでよし」

ロード画面に成ったテレビを確認して、正信は年上の美しい従姉妹を振り返る。

「それで、いったい、なんのDVDなの? 映画? ドラマ? それとも歌手のPV? 」

色々と問いかけて見ても、美紗子は微笑むばかりで返答しない。

 

「見れば分かるって言いたいみたいだね、それじゃ、見せてもらいま… ええええ! 

 なんじゃ? こりゃ? 」

購入したばかりの薄型テレビの液晶の画面には、目の前で冷中華を食べ終えたばかり

の美紗子が椅子に腰掛けて微笑んでいるのだ。

「あれ、この部屋、見覚えがあるぞ、そうだ、緒方さんの別荘の… 」

「ピンポーン、大正解! さっすがショウちゃん」

驚く正信を他所に、画面の中から美紗子の声が漏れて来た。

『沢山美紗子、24才、専業主婦で、子供はまだいません。今回が初めてのパーティ

 への参加になりました』

カメラのレンズを見つめたまま、テレビの中の美紗子は妖艶な笑みを絶やさない。

『はい、ミサコちゃん、それじゃ、脱ぎ脱ぎしましょうね』

声から察すると、おそらくカメラを構えているのは吉岡であろう。混乱する正信に向

かって、いよいよ、もったえぶった美紗子が真相をバラす。

「ほら、この前の集まりの最後の晩は、私とショウちゃんの歓迎パーティに成ったじ

 ゃない。ショウちゃんは関口さんや吉岡さんの奥さんと、それに真弓子さんの3人

 でお楽しみだった間、私は男性会員の皆さんや淑子さんと過ごしたのよ。これは、

 その時に皆が入れ代わりで撮影してくれた記録のコピーなの」

自分が性に貪欲な3人の若妻から一晩に精を何度も搾り取られていた時に、美紗子も

また素晴らしい経験をしていたようだと、正信はテレビの画面と目の前の美紗子の顔

を交互に眺めた。

 

 

 

 

 


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