「少し横になれば気分も晴れると思うので、申し訳ありませんが、このまま寝室に 連れていってください」 同じ間取りのマンションだから、初めて上がり込んだ隣室であっても寝室の場所は 想像が付く。素直な和人は心の底から真弓子の具合を心配して、彼女を担ぐように ベッドルームと当たりを付けた部屋に連れて行く。案の定、ドアを開けると、そこ は寝室であり、ツインの和人夫婦の部屋とは異なり、滝川家の寝室の中央には大き なダブルベッドが鎮座したいた。 「大丈夫ですか、真弓子さん、さあ、ベッドに横になってください」 端正な顔を僅かに歪めて不快感を露にする美貌の若妻をベッドに横たわらせた和人 は、これからどうしたものかと途方に暮れる。 「あの、とりあえず、お水でも、持って来ましょうか? 」 なんとなく気詰まりな寝室からの脱出を試み、身を引きながら和人は小声で問いか けた。 「ごめんなさい、でも、お水よりも、背中を摩ってもらえませんか? その方が気 分が良くなると思います」 別に断る理由も無いので和人は再びベッドに歩み寄り端に腰掛けて、俯せに成った 美人妻の背中を撫でてやる。
(ちぃ… 美紗子さんには聞いていたけれど、本当に朴念仁なのね。酔っぱらった 女を寝室に連れ込んでおいて、それでもまだ、心配して背中を摩るだけなの? ウチの人なら、部屋に入った途端に女をひん剥いて、有無も言わさずに突っ込ん でくるのに) 人柄は尊敬出来ても、隣家の間抜けな旦那が男としての魅力が皆無と分かった真弓 子は、ちらっとベッドサイドのクロゼットの扉に仕込まれたレンズを見る。この部 屋の5箇所に仕込まれた小型のDVDの録画装置のひとつであるクロゼットの扉の 仕込みレンズは、そう言われて注目しても、なかなか見つけられる代物ではない。 緒方の屋敷から事情を説明して借り出してきた夫は、嬉々としながら部屋の至る所 にカメラをセットして、一日掛かりで慎重に角度調節を済ませていた。また、この 先の展開をスムーズにする為に、予備も含めた2つの盗聴器が、一言一句漏らすこ となく、音声を発進し続けていることだろう。何時まで経っても背中を摩るだけの 和人に苛立った美人妻は、次のプランを実行に移す。
「あの、カズトさん、お願いがあります」 「はい、なんでしょうか? 」 心配する間抜けな隣家の旦那が可笑しくて、真弓子は笑いを堪えるのに苦労した。 「あの服が少し、キツくて気持ちが悪いんです。背中のジッパーを降ろして下さら ないかしら? 」 「あっ、あの、はい、分かりました」 これまでに女性から積極的なアプローチを受けた事の無い和人は疑いもせずに、彼 女のワンピースの背中のチャックを下げ降ろす。 「ああ、やっぱり、まだ苦しい… すみませんが、ブラのホックも外してちょうだい」 真弓子の吐息混じりの懇願だが、さすがに下着に手を触れることに和人は躊躇する。 「おねがい、きつくて、苦しいの、ブラも外して」 「あっ、はい、わかりました」 まごつきながら、なんとか隣家の若妻の望みを叶えるべく奮闘した和人は手間取り ながらもブラジャーのホックを外した。 (ここまで、やっても、まだ、のしかかって来ないなんて、コイツ、インポなんじ ゃないの? ) 野暮天だとは聞かされていたが、こんなに鈍い男も珍しいと呆れながら、真弓子は 計画序盤の最終段階へと移行する。
「やっぱり、お願い、お水をいただけますか? 冷蔵庫にミネラルウォーターのペ ットボトルが入っていますから… 」 「わっ、わかりました、ちょっと待っていて下さいね」 ようやく、この妖し気な雰囲気から脱出できる事を素直に喜び、和人は寝室を後に した。すると、それまで苦し気な風情を装っていた真弓子はベッドから飛び起きる 。手早くワンピースを脱ぎ、引っ掛かったままのブラも投げ捨てた彼女は、ショー ツごとパンストも丸めて脱ぎ去り、ドレッサーの椅子に放り投げた。そのまま息を 殺して出口に向かい、扉の傍らで裸身を壁にピタリと寄せた真弓子は、ここからが 肝心だと、改めて気を引き締める。一方、ダイニングの冷蔵庫から冷えたミネラル ウォターのペットボトルを持ち出して、ついでに空のグラスを手にした和人は、帰 宅のタイミングを計りかねていた。 (まいったな、でも、このままにして帰ってしまうのも、無責任だし… それにし ても、真弓子さんの背中、綺麗だったなぁ… ブラも黒だったし、く〜色っぽい 、このまま、ひょっとしたら、ひょっとして… いやいや、まて、へたに手出し して、頬でも張られた日には、もうこのマンションに住めなくなるぞ) 寝室の扉の前に辿り着いた和人は、己の劣情を宥めるために、ひとつ大きく深呼吸 してからドアをノックした。 (あれ? 返事がないな? もう寝てしまったのかも? それはそれで、しょうが ないか、でも、なんだか惜しいことをしたのかも知れない)
あと一歩のところで踏み止まり、理性が欲情を制したことに満足しながら、それで いて少し残念にも思う和人は、もう一度、軽くノックをしてから、返事を待たずに 寝室のドアを開けた。 「滝川さん、お水を持ってきましたよ、えっ? あれ? 」 さっきまで苦悶の表情のままベッドに横たわっていた美人妻が、影も形もなく消え 失せていた事に和人は驚きを隠せない。ベッドの周囲に脱ぎ散らかされたワンピー スや下着類も彼の困惑を深めている。しかし、本当に彼を驚かせるのは、これから 先の事なのだ。背後から忍び寄った美女に、いきなり抱きすくめられて、和人は思 わず驚愕の声を漏らす。 「うわぁ… あの、えっと、滝川さん? 」 「ええ、そうよ、カズトさん」 前に廻り込んだ美人妻が一糸纏わぬ姿であることに動揺した和人は、二の句が告げ ず、その場に固まる。右手にはミネラルウォーターのペットボトル、そして左の手 には空のグラスを持つ和人だから、しがみついて来る隣家の美人妻を突き放すこと が出来なかった。 「最初に会ったときから、アナタのことが忘れられなかったの。ねえ、お願い、抱 いて」 彼女を寝室に連れて来た時に想像した最高の展開が現実のモノと成った和人は、そ れでも最後の理性の箍にすがり、一応は否定の言葉を口にする。 「だっ、だめですよ、真弓子さん、僕には妻が… 」 「あら、私のも夫がいるわよ、だから、これは二人だけの秘密ね、それに… 」 真弓子は大胆にも、両手が塞がった隣家の旦那の股間に手を伸ばし、ズボン越しに まさぐるのだ。 「うふふ、ほら、ここを、こんなに膨らませているのに、駄目だなんて言っても無 駄よ」 寝室で彼女を介抱している時から疼いていた股間は、真弓子の全裸姿を目にした途 端に膨れ上がっていた。 「ねえ、今夜、一晩だけ、私を思いっきり可愛がってちょうだい。二人だけの秘密 を楽しみましょう」 全裸で抱き着いて来た美しい若妻を振り解くほどには和人も人間は出来てはいない。 「おっ、奥さん! 」 「いや、奥さんだなんて、ねえ、今夜だけ。真弓子って呼び捨てにしてちょうだい 、いいでしょう? カズト」 美しい隣家の若妻の誘惑は強烈であり、和人は逆らう事ができなかった。
(あわわ、ペースの配分を間違えて、中途半端なところで次回に続くになってしまいました… とほほ)
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