倉の中の闇 後編

 


その9

 

 

 

 

トントン… 

扉を叩く音が聞こえたが、優香はベッドに横たわったまま身動きひとつしない。や

がてガチャっと言う音と共にドアが開かれた気配がした。

「優香ちゃん」

姉の呼び掛けを無視して、優香は身じろぎひとつせず天井を睨んでいる。

「ちゃんと見てくれた? 私とお父様のこと? 」

瞬きもせずに口をへの字に結んだままの妹の頑な態度を見て、礼子はやれやれとば

かりに小さく首を横に振りうす笑みを浮かべる。父との破廉恥な行為で汚れた身体

を清めたのであろう、優香の鼻孔に姉の愛用するシャンプーの香りが漂って来た。

「なぜ? どうしてなのお姉ちゃん? お父様とあんな事をするなんて! 」

我慢しきれなくなった優香はガバっと身を起こすとベッドの上から姉を睨み付ける。

「なぜって? 好きだからよ。お父様が大好きだから、この身を捧げる事を誓ったの」

まだ乾き切らぬ長い髪をバスタオルで擦りながら、純白のバスローブ姿の礼子は妖

艶に微笑んだ。

「子供の頃から大好きだったお父様に望んでもらえたから、私は喜んでお父様の性

 欲処理女に成ったの。ちょうど良いタイミングで優香ちゃんが家を離れてくれた

 から助かったわ。でも家族だからいずれは優香ちゃんにもバレてしまうと思って

 、私とお父様の関係を知ってもらったのよ」

「どうかしている! お姉ちゃんもお父様も、絶対に変よ。だって父と娘がセック

 スするなんて間違っているわ。ねえ、お姉ちゃん、それって近親相姦じゃない!

 お姉ちゃんもお父様も頭がおかしく成ったの? 」

優香はまだ倉の外から覗いた光景が忘れられず、つい声を荒げて姉を詰る。

 

「ええ、そうね、たしかに私は頭がヘンに成ってしまったのかも知れない。だから

 私はお母さまが犯した罪を償う為にお父様の性欲処理専用の肉穴に成ったの。で

 も、後悔はしていないわ。私は女の悦びをお父様から与えてもらったのですもの

 。今の私はお父様専用の性欲処理便器、おくちも、オマ◯コも、そしてお尻の穴

 も。全部がお父様のもの」

姉が倉の中で見せた恍惚とした表情で語る衝撃の台詞に、優香は圧倒されて声も出

ない。

「もちろん、すべての穴の処女はお父様に捧げたし、お父様以外の男根は知らない

 わ。私は罪深い母親の行いを償う為に生まれたお父様専用の肉便器なの」

「そんなの変よ! 絶対におかしい! 私は認めない、お父様とセックスするお姉

 ちゃんを、絶対に認めない! 」

父親に抱かれてアブノーマルな行為で快楽を得るのは当然の事だと言わんばかりに

胸を張る姉の態度が腹立たしく、つい優香は強い口調で言い返す。

「だいたい、お母さまの罪ってなんなのよ? それに、もしも亡くなったお母さま

 が、どんな酷い事をしたにせよ、それでお姉ちゃんがお父様とセックスして良い

 わけが無いでしょう。血の繋がった父親と娘なのよ、近親相姦じゃない! 不潔

 、変態だわ! 」

自分自身も心の奥底に断ち切る事の叶わぬ父親への慕情を隠す優香は、あまりにも

簡単に常識のハードルを乗り越えて父との肉交に及んだ姉に対して、複雑な怒りを

ぶつけて行く。なぜ姉が選ばれたのか? なぜ自分では無いのか? こんなに愛お

しく思う父親が欲情を満たす相手として自分では無く姉を選んだ事が、どうにも優

香には許せない。

たしかに近親相姦に対するタブーは強く感じている。だが、その禁じられた行為を

易々とやってのけて、その上、極めてアブノーマルな性行為にすら及ぶ姉と父のセ

ックスが優香にはうらやましく妬ましいのだ。

 

「お母さまが、どんな罪を犯したのか、知りたいの? 」

曰くありげに微笑む姉に向かって、優香は大きく頷いた。

「たとえ、どんな理由があっても、お姉ちゃんがお父様とセックスするのは間違っ

 ているわ。でも、そんな風にお姉ちゃんが思い込んだ理由を私は知りたいのよ」

常に物静かで思慮深い姉が常識を踏み越えて近親相姦への道を選び、自ら父親の性

欲処理穴女であると宣言するに到った原因を知りたくて、優香は真剣な眼差しで姉

を見つめる。

「本当に知ってしまってもいいの? 世の中には知らない方が幸せなことって、い

 くらでもあると思わない? たぶん、これもそのひとつだわ。私は、ただ優香ち

 ゃんが私とお父様の関係を認めてくれて余計な騒ぎを起こさなければ、それだけ

 で十分なの。別にお母さまの過去の罪を責めるつもりも無いし、無理に優香ちゃ

 んが知る必要はないのよ」

父親の愛を一身に受け、しかも末娘の知らぬ亡き母の秘密まで一人占めしている礼

子の余裕綽々の態度が気に入らず、優香は厳しい目を姉に向けた。

「おしえてちょうだい。たとえ、どんなに酷い過去の過ちであっても、けしてお姉

 ちゃんとお父様の行為を正当化なんて出来ないわ。でも、何も事情が分からなけ

 れば、お父様の暴挙を止める事は難しいでしょう。だから、お姉ちゃんが知って

 いる亡くなったお母さまの罪を私にもきちんと教えて」

優香の決意を聞いた姉は小さく重い溜息を漏らすと、バスローブのポケットから古

ぼけた日記帳を取り出した。

 

「たぶん優香ちゃんは、そう言うだろうと思って一応は用意して来たの。見ての通

 り、これはお母さまが生前に記した日記よ。でも、これを見たら、もうあなたも

 後戻り出来ない所に追いやられる事に成るわ」

礼子は亡き母の日記を妹の部屋の机の上に静かにそっと置いた。

「読むも、読まないも、優香ちゃんの自由、私はどちらも強制はしない」

それまでに比べると、一段低い声のトーンで礼子は最後の警告を与える。

「でも、ひとつだけ言っておくわ。この日記は、私はもちろんだけれども、お父様

 も最初から最後まで目を通されているのよ」

いったい、その日記には何が記されているのだろうか? 姉が父親に身を委ねるよ

うな破廉恥な行為を決断させるには、どんな事実があったのか? 優香の目は姉か

ら離れて机の上の古い日記帳に釘付けだ。

「これは、ここに置いてゆくわね。でも生半可な覚悟で手にしたら死ぬほど後悔す

 る事になるから、読む時には心しなさい」

何故か最後は寂しげな顔をして痛ましそうに妹に警告を発してから礼子は身を翻す

と、振り向く事も無く部屋を出て行ってしまった。

姉が置き去りにした分厚い日記帳を、まるで悪魔の書の様に感じた優香はしばらく

の間、表紙を見つめることしか出来なかった。実の姉が父親と肉欲に溺れる原因と

成ったと言われた亡き母の遺品の日記に、いったいどんな狂気が宿っているのか恐

ろしくて、優香は中々ふるびた日記に手が出せなかった。しかし、聡明な姉と人格

者である父親が近親相姦に走った原因を是が非でも知りたい優香は、震える手を日

記に延ばすと、ひとつ大きく深呼吸をした後に思いきって最初のページに目を向け

た。

 

 

 

 


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