その5

 

 

 

 

「はい、カレーは大好物です。でも、御礼だなんて、そんな、僕は大した事はして

 いませんよ」

「いいえ、あなたには本当に助けてもらったわ。あれ以来、西崎くんも毎日、ちゃ

 んと登校してくれているもの」

彼の説得が効果があったと言うよりも、単に切っ掛けを作っただけだと感じて芳弘

は、感謝感激の女教師の言葉に照れまくる。月曜日に首尾よく引き蘢りのクラスメ

イトを登校させたのち、授業の合間の休憩時間に廊下で智代は彼の事を呼び止めて

、よくやってくれたと感謝すると共に労いの言葉を掛けてくれていた。それだけで

も十分に満足した芳弘だったが、改めて御礼の為に休日に招待してくれた心遣いが

嬉しくて、自然と頬が弛んでいる。

「私、カレーにはちょっと煩いのよ。チキンカレーは友達にも評判が良いから、期

 待してちょうだいね」

謙遜はするものの、このチャンスを棒に振るのは余りにも勿体無いので、結局彼は

翌日の訪問を快諾した。

 

 

二度目の訪問だし、今回は前とは違って今度は目的もはっきりしていたから、芳弘

は悩むことなく呼び鈴を押し込む。

「は〜〜い」

「あの、僕です、新田です」

前回と同様に返事は無く、いきなり施錠が解かれてドアが開いた。

「いらっしゃい、まっていたわ、さあ、どうぞ、中に入って」

扉が開いた途端に何とも香ばしいカレーの香りが漂ってきて芳弘の鼻をくすぐる。

「良い匂いですね」

今回手土産に選んだイチゴのショートケーキの箱を手渡してから、芳弘はリビング

へと足を踏み入れた。今度はソファに腰を降ろすこともなくリビングを通り抜けて

、促されるままにダイニングへと辿り着く。二人がけのダイニングテーブルは意外

に小さく、まるで新婚の家庭みたいだと妄想しながら、美しい女教師の対面に腰掛

けた少年は夢心地でチキンカレーを頬張った。

世程に少年に恩義を感じたのか? 食事の最中の智代は常に明るく微笑み、過去の

学生時代のことや、もっと昔の子供の頃のエピソードを面白おかしく話してくれる

ので、芳弘は何度も何度も頷きながら、クラスでも評判の美人教師を一人占めする

幸福感を噛み締める。食事が終わると彼は再びリビングへの移動を促された芳弘は

、彼女が用意してくれた食後のコーヒーも美味しくいただいた。

一旦、ダイニングに戻った智代はすぐに自分の分のコーヒーカップを手にして戻っ

て来る。そして、驚いたことに今度の彼女は教え子の対面では無く、硝子テーブル

の淵を回り込み芳弘の隣に腰掛けて来たのだ。

(うわ! すごい、やった! 嬉しい!)

仄かに香る香水に大人の魅力を感じた芳弘は、わざと躯が密着するように隣に腰掛

けた女教師の行為を訝る一方、ドキドキしながら肺いっぱいに彼女の甘い香を吸い

込んだ。コーヒーをひと口飲んだ後、カップを硝子のテーブルに置いた美貌の女教

師は、微笑みながら芳弘の方にもたれかかり、行儀よく膝の上にあった彼の手の上

に自分の掌を重ねた。

 

「ほんとうに感謝しているのよ新田君、だから… 」

瞳を潤ませて囁く智代の美しさに改めて圧倒された少年は、敬愛する美人教師の次

の言葉を待った。

「だから、ね、今日、先生は御礼に君の言うことをなんでも聞いてあげようと思う

 の」

驚くべき智代の台詞に、少年は我が耳を疑う。

「なにか、お望みは無いかしら? なんでもいいのよ」

驚くべき展開に付いて行けずに固まる少年を他所に、智代は喋り続ける。

「西崎くんが不登校に成った時に、私は学年主任から教師としての指導力不足だっ

 て毎日のように責められたの。どんなに頑張っても西崎くんは出席してくれない

 し、それを理由に学年主任はわざわざ職員室で、他の先生達が見ているまえで嫌

 味ったらしくねちねちと叱責するから、本当に針の筵だったのよ」

自分達生徒の知らぬ間に、そんな不幸が智代に降り掛かっていた事に驚き、芳弘は

西崎に対して怒りを覚えるのと同時に、赤ら顔で小柄な学年主任の男性教諭に対し

ても憤慨していた。

「思い余って、君に相談した時には、本当はあまり期待はしていなかったの、でも

 藁にも縋る気持ちでお話を持ちかけたら、君は簡単に問題を解決してくれたわ。

 本当にありがとう」

感謝を込めた眼差しで見つめてくれる美貌の女教師の台詞は芳弘の心を揺り動かす。

「だから、是非、御礼がしたいのよ、ねえ、なにか望みはないかしら? 」

熱心に問いかける女教師の言葉が少年の理性を痺れさせた。

「本当に、なんでもお願いを聞いてくれるのですか? 」

興奮の余り声が思わず裏返ったのは情けないが、熱に浮かされたような気持ちで芳

弘が問い質す。

「ええ、女に二言は無いわよ、さあ、なんでも言ってみてちょうだい」

「それならば、あの、僕の頬にキスして下さい! 」

少年の言葉に智代は目を丸くした後で笑顔を見せた。彼女に促されるまま、つい本

音を口走ってしまった少年は、自分の大胆な言葉に驚くと同時に理性を取り戻す。

 

「あっ、ちがいます、あの、今のは冗談です、御免なさい、調子に乗ってしまって

 、だから、いいです、聞かなかったことにして下さい」

「い・や・よ、しっかり聞いちゃったもの」

慌てふためく少年の狼狽ぶりを他所に、美しい女教師はあっと言うまに顔を傾けて

芳弘の頬にキスをした。憧れの女教師の柔らかな唇の感触が少年を唖然とさせる。

(うわぁぁぁぁ、先生が、智代先生がほっぺたにキスしてくれた! )

感動の余り身を震わせた芳弘を見る女教師の目に欲情の炎が揺らめいた。

「まったく、可愛いったらありゃしない。なんで君はそんなに可愛いのかしら?

 もう我慢なんて出来っこ無いわよ」

憧れの美しい女教師から頬にキスしてもらったことで茫然自失の少年の顔に両手を

伸ばした智代は、彼の頬に掌を当てると少し強引に自分の方にねじ曲げる。なすが

ままの少年の態度に満足したのか、微笑み小さく頷いたのちに美人女教師は担任の

生徒に唇を重ねた。

(うわ、僕ってば、いま、先生とキスしてる。子供騙しのほっぺへのチューじゃな

 くて、唇への大人のキスだ)

最初に呼び出された時に、頭の中を駆け巡った幾つもの妄想の中には、こうして彼

女とキスを交わすのもあったが、今、現実に美しい女教師と唇を重ねてみれば、芳

弘の感動は言葉にはし難い代物だった。余りにも予想外の展開だから、キスを交わ

す最中も芳弘は目を閉じることには思いが及ばず、間近で憧れの女教師の顔を見つ

めることになった。

いつもは遠く離れた席から教壇に立つ凛々しくも美しい智代をうっとりと眺める立

場だったのに、いまは少し手を伸ばせば長い髪に触れることも出来る距離まで接近

したことは、こうして唇を重ねていても信じられない。だが、これがまだ、ほんの

御挨拶程度の行為であることを、次の瞬間に早くも芳弘は思い知らされる。唇を重

ねるだけでも十分に刺激的な体験なのに、あろうことか美しい女教師は舌まで差し

入れてきたのだ。

 

 

 

 

 


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