その22

 

 

 

 

「次の週末はヒマか? 新田」

昼休みに提出物を持って職員室を訪ねた芳弘は、理性を総動員して何気なさを保ち

ながら平然と昼間の顔である教師の仮面を被った智代にプリントを手渡すと、無表

情のまま部屋を後にした。廊下に出てホッと溜息を漏らして、震えそうに成る膝を

内心で励ましながら歩き始めた少年は、すぐに彼を追って職員室を出て来た前澤に

呼び止められたのだ。

「暇じゃなくてもヒマを作れよ」

幸いなことに人気の途絶えていた職員室前の廊下で、それでも用心した前澤が小声

で呼び掛ける。

「えっ、あの… 」

余人に知られては成らない秘密を共有する教師と生徒だから、芳弘は顔を赤くして

ドギマギしながら左右を見回す。

「おいおい、そんなにビビルなよ。そんな態度だと痛くも無いハラを探られるぞ! 」

痛くも無いどころか脛が傷だらけと言っても過言では無いから、少年は呆れて肥満

気味の科学教師の顔を見つめた。

「そうそう、そうやって太々しくしていれば良いんだ。おっと、そんな事よりも、

 次の週末だが、そうだな… 土曜日の昼過ぎぐらいに智代のマンションまで来い

 よ。お前、男なんだから一晩くらい家を空けても平気だろう? いいな、待って

 いるぞ」

言いたい事を語り終えた前澤は少年の返事も待たずに身を翻して職員室に戻って行

く。もちろん芳弘の方に異存があるわけでは無く、彼は親に対する外泊の言い訳を

あれこれと考えながら友人達が騒がしい昼休みの教室に足を向けた。

 

 

「やっぱり、なにか手土産を持ってきた方が良かったかなぁ? 」

淫に狂った女教師からは、今後の来宅の際には土産の気遣いは無用と念を押されて

いたが、それでも初めて手ブラで智代のマンションのドアの前に立つと生来の気の

小ささが首をもたげて彼を不安にさせていた。

(え〜い、もしも咎められたら、次から改めればいいや)

ドアの前で30秒ほど逡巡した後に、彼は意を決してようやくインターホンのボタ

ンに人差し指を差し伸べた。ベルの音のあと、10秒以上も待たされたのちに、よ

うやく中から反応があった。

『は〜い、どなた? 』

「あぅ、あの、僕です、新田です」

インターホンのスピーカーの雑音が途絶えて、さらに30秒近く待たされた芳弘が

不安の余りに再度ボタンに手を伸ばそうとした時に、ようやくガチャガチャと音を

立てて施錠が解かれて扉が開いた。

「はいって、ヨシヒロ」

純白のバスローブ姿の女教師の上気した風情に気押され、あの生徒指導室での痴態

を思い出し赤面した芳弘は、促されるままに彼女のマンションの玄関に足を踏み入

れた。

「これ、まだ渡していなかったわよね。忘れていたわ」

さも当然とばかりに小さな赤いリボンのついたスペアキーを手渡されて少年は面喰

らう。

「あの、いいんですか? 鍵を預かっても? 」

「あら、御主人様なら当然でしょ」

欲情で瞳を潤ませた美貌の女教師は教え子に部屋の予備の鍵を手渡しながら彼の頬

に唇を押し当てる。

 

「これでヨシヒロはいつでもここに来て、私を抱いて下さってもかまわないのよ。

 オナニーなんてもったいない事はしないで、女が欲しくなったら真夜中でもかま

 わないから、この鍵を使ってちょうだい。私はいつでも股を開いて御主人様を歓

 迎する肉便器なのだから」

彼女の学校で担任の教師として生徒の指導に当る時との凄まじいギャップが芳弘を

改めて驚かせる。美貌の女教師の本性が被虐をこのなく愛する淫乱な奴隷女だと言

うことを、もう少年は疑ってはいない。

しかし、あらためて牝の媚びを隠そうとしない智代の態度を目の当たりにすると、

過去に憧れの女教師を崇拝していた少年は複雑な感情を持て余していた。手渡され

たスペアキーを宝物のように大事に思いズボンのポケットにしまった少年を手を引

き、女教師はリビングでは無く寝室の方に歩き出す。

「御主人様は、朝からもう来ていらっしゃるわ。あっ、御主人様って勝也さんの方

 よ。ええと、御主人様が二人って、ややこしいことになっちゃたわね」

ここで迂闊にも科学教師の前澤の名前が勝也であると知った少年は、困った顔の女

教師に救いの手を差し伸べる。

「あの、僕のことは御主人様じゃなくて、名前で呼び捨てて下さって結構ですよ、

 先生」

新参者の俄御主人様の言葉に智代は微笑み頷いた。

「それならば、勝也さんは御主人さま、そして君のヨシヒロさまって呼ばせてもら

 うわね」

「いや、その、ただの芳弘で… 」

少年の返事を待たずに彼女は二人目の御主人さまの手を引いて寝室に向かった。

 

 

「お待たせしました、御主人さま。ヨシヒロさまがいらっしゃいました」

「おう、遅かったな、新田」

ベッドの上で腹ばいになり煙草をふかしていた肥満気味の科学の教師は、自分達の

変態プレイに巻き込んだ優等生が到着すると、手にした煙草を灰皿でもみ消してム

クリと身を起こした。あたりまえの様に全裸だから、黒々と生い茂った恥毛の下で

はどす黒い一物がだらりと垂れ下がっている。目のやり場に困った芳弘の戸惑いが

おかしいのか? 前澤は歯を剥き出しにして下卑た笑い声を張り上げた。

「がはははははは… なんだ? 女みたいに目を逸らしやがって? ひょっとして

 、お前もこれが欲しいのか? 」

「じょ、冗談じゃありません、僕は男には興味なんか無いですよ」

軽口を真に受けて青ざめた少年を見て、前澤はベッドの上で笑い転げた。

「ば〜か、俺だって男には興味はね〜〜よ」

ようやくからかわれたことを察した芳弘は膨れっ面になりプイと横を向く。

「さてと、これで役者は揃ったな、それじゃ智代、続きを始めるぞ」

ベッドサイドに浅く腰掛けた前澤の言葉に、女教師は輝くような笑みを浮かべる。

少年を見てウインクした後に彼女は潔くバスローブを脱ぎ捨てて全裸を曝した。な

にごとかと呆気に取られる芳弘を他所に、智代は嬉々として前澤の前に歩み寄り、

そのまま跪く。

「新田、お前の出番はもう少しあとだ。いまは、この淫売のフェラチオでも眺めて

いてやってくれよ」

 

 

 

 

 


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