その35

 

 

 

 

「心配はいらないよ、由梨江さん。少し休めばきっと大丈夫さ」

不安げな表情を崩さぬ義理の妹に声を掛けてから、前澤は振り返りホテルの関

係者の中からフロア責任者を見つけた。

「すまないが、こういう事だから、妻はしばらくの間、スイートで休憩させる

 よ。来場された招待客や親族の皆さんは、披露宴の会場に移動してもらって

 くれたまえ。妻の回復の具合によっては、若干、予定が遅れる可能性もある

 ので、そこのところは担当者の方で上手く調整してくれると助かる」

「はっ、はい、承知しました」

落ち着き払った前澤の態度のおかげか? 最初は多少慌てふためいて見えたホ

テルの担当者も冷静さを取り戻すと、テキパキと配下に次々と指示を出し始め

る。そんな中、気絶した花嫁を抱いた前澤は、もう由梨江には目もくれずにヴ

ァージンロードを出口に向かって歩き始めた。

「新田、いるか? 」

「あっ、はい、先生」

いきなり名前を呼ばれて衆目を集めることになった少年は、ズボンのポケット

に証拠のコントローラーをしまってから前澤の元に駆け寄った。この混乱の中

ならば、もう由梨江の目を気にする必要は無いだろう。彼は自分が起こした騒

動に怯えて少し後悔しながら前澤の元に馳せ参じた。

「このまま俺と智代はスイートに戻る、すまんがお前も手を貸してくれ」

「はい、わかりました」

気働きの利く少年は返事と共に駆け出し、ホテルの関係者を申し訳無さそうに

押し退けて教会の扉を開く。花嫁を抱いた前澤を先導して中庭を突っ切り、エ

レベーターホールに辿り着くと、幸い到着していた一器に彼等は駆け込んだ。

静かに扉が閉じて、すぐにエレベーターの上昇を感じ取った時に、青ざめた芳

弘は気絶した花嫁を抱く前澤に向かって頭を下げた。

 

「すみません、まさか、こんな事に成るなんて… 僕は、その… 」

「なにを謝っているんだ? 最高だよ、お前は最高だ。智代がお前を選んだわ

 けだぜ。まさか、あのタイミングで来るとは… いいぞ、お前はいい。本当

 にお前って奴は大したひろいモノだぜ。くくくくく… 」

あのアクシデントもサド教師にとっては被虐奴隷女に対する絶好の責めと受け

止められていた。油断した花嫁を最後の最後で愉悦の地獄に突き落とすような

残酷で甘美な責めを成し遂げた相棒に、彼は心から感謝している。結婚式の誓

いのキスの瞬間に意識を無惨に刈取る凄絶な快感に魂を削り取られた奴隷女が

、これからどう成って、いったい何処まで堕ちて行くのか? 新妻に対する期

待を前澤が大きく膨らませた。

また、この騒動の原因を作った少年は、自分の考えの足らぬ行為を前澤が怒る

どころか、大いに喜んでいることで安堵の溜息を漏らしていた。たしかに幸せ

そうな智代の花嫁姿を見て複雑な心境を持て余した芳弘だが、まさか最大出力

のローターの破壊力があんなにも絶大で、瞬時に肉奴隷女の意識を途絶えさせ

るとまでは思っていなかった。

前澤とくちづけを交わしながら、彼女が悩ましい憂い顔を見せることを期待し

ての行為だったが、思った以上に劇的な効果を上げたことは芳弘を困惑させて

いる。それぞれの思惑を胸に秘めた二人を乗せたエレベーターは、ほどなく最

上階に辿り着く。最初に箱を飛び出した少年は、前もって渡されていたカード

キーを用いて目的のスイートルームの施錠を解き、意識を失ったままの花嫁を

抱きかかえる前澤を室内に導き入れた。いくら軽い女性と言っても、日頃の運

動不足が祟り、既に息を切らせていたキモオタ科学教師は、多少、足元をふら

つかせながらも何とかリビングのソファへと辿り着き、恍惚の表情のままで悶

絶している智代を静かに長椅子に横たえた。

 

「ふぇ〜 草臥れたぜ」

首元に指を差し入れて白の蝶ネクタイを忌々し気に緩めながら、額に薄らと汗

を浮かべた前澤が深く溜息を漏らす。その傍らでは、気絶した美貌の女教師が

醸し出す凄絶な色香に当てられれ、彼女から目が離せなくなった芳弘が、生唾

を何度も呑み込みながら呆然と立ち尽くす。

(なっ… なんて綺麗なんだ)

花嫁の純潔の象徴の真っ白いウエディングドレスを身に纏いながら、まるで色

町で客の袖を引く娼婦のように淫猥な笑みを浮かべたまま悶絶する智代の横顔

から目が離せぬ少年は、自分がしでかした騒動の大きさに恐れ怯えながら、そ

の一方で、こんなにも智代に深い快楽を与える事が出来たのを純粋に喜んでも

いた。そんな少年の心の機微など知る由も無い前澤は、スイートルームに備え

付けのバーカウンターの奥に回り込み、冷蔵庫から冷えたミネラルウォーター

の瓶を二本取り出し、手慣れた様子で次々と栓を抜いた。

「ほれ、よくやったな」

最初に手にした1本を煽り、中身を半分ほど嚥下したキモオタ教師は、残る一

本を絶妙な仕事をなし得た相棒に差し出した。

「あっ、ありがとうございます」

自分ではそうは思っていなかったのだが、目の前に汗をかいたミネラルウォー

ターの瓶を差し出された少年は、緊張の余り咽がカラカラに乾いていた事に気

付く。キモオタ教師の好意をありがたく頂戴した芳弘は、恩師と同じように瓶

を傾けて、やはり半分近くまで冷水を咽に放り込んだ。

 

「さてと、急かすようで悪いんだが、お前はすぐに下に降りてくれ。ホールの

 様子を見て異常が無ければ、そのまま披露宴会場に入ってくれてかまわない

 。なにも無ければ、そのまま俺と智代が行くのを大人しく席に付いて待って

 いろ。でも、何か不都合があったら… 」

なんと、真っ白のタキシードの胸ポケットから、キモオタ教師は不粋な携帯電

話を取り出したではないか。

「あの、先生、まさか、それ、結婚式の最中にも持っていたんですか? 」

「あん? ああ、まあな。心配するな、ちゃんと電源は切っておいたさ」

彼の言葉に間違いは無く、片手で前澤が携帯を操作すると、耳にやわらかな起

動音が小さく響いた。

「これでよし。いいか、もしも何かヤバイことがあったら、携帯で連絡を頼む

 。それから… 」

ここで前澤は邪悪な笑みを漏らす。

「披露宴の最中も、うまくこの売女を嬲ってやってくれ。まだ、コントローラ

 ーは持っているだろうな? 」

鬼畜教師の言葉に応えて、頷きながら少年はポケットから凶悪な玩具をあやつ

る小箱を取り出して見せる。

「上等だぜ、退屈だと思っていた結婚式だが、こんなに盛り上がるとは嬉しい

 誤算だよ、これもお前のおかげだぜ、ヨシヒロ」

親愛の情を込めて、軽く少年の肩を小突いた前澤を、まるで眩しいものでも見

るように目を細めて芳弘が見つめる。

 

 

 

 

 


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