GW 特別企画

 

憧れの女は生徒会長

 


その1

 

 

 

「まったく、僕って奴は、なんで、こんなに間抜けなんだ! 」

初夏と言うこともあり日は長くなっていたが、それでも午後7時を過ぎれば、辺は夕

闇に包まれて行く。やわらかに吹く風は気持ちよいが心はどんよりと曇った塩沢洋一

は通い慣れた通学路をトボトボと歩いている。今日の放課後、生徒会役員による会合

に書記である洋一も参加したのだが、その際に生徒会室の机の下のもの入れに、やり

かけた宿題と教科書を仕舞い込み、まんまと忘れて帰宅していた。自宅に戻り、さて

宿題の続きを… と、鞄を開けた若者は、そこに目当ての教科書ばかりか、計算式の

途中まで解いたノートも無いことに気付き、ひとり自室で打拉がれた。

 

翌日の数学の授業は2時間目だから、朝、少し早めに登校して生徒会室に赴き、忘れ

物を回収すると言う選択肢もありはしたが、生徒会の会合の前に1時間近く頭を悩ま

せた宿題を、朝、登校してから2時間目までに解くのは難しい。数学の先生は厳しい

ことで知られていて、毎回数人に宿題を課して、それをクラスメイト全員の前で黒板

に立ち解くのが決まりで、もしも怠けて間違えたり迂闊に忘れていたりしたならば、

週末の休日は絶対に潰れる程の分量のレポートの提出を命じられるのだ。

だから洋一は生徒会活動の合間を見て寸暇を惜しんで与えられた課題に取り組んでい

た。もちろん生徒会の書記の仕事も疎かには出来ないので、いざ会合が始まった時に

、彼は慌てて私事である宿題を机の下の物入れに放り込み、生徒会の一員として会合

に参加していた。

(だからと言って、忘れて帰ることは無いだろうに… )

一旦、家に帰ったことから、往復でたっぷり1時間半は浪費することに成るが、それ

でも教科書が無ければ宿題に取りかかることが出来ないので、こうして若者は夕闇の

迫る街角を背中を丸めて歩いていた。彼の母高は中高一環教育が売りのマンモス学校

だが、さすがに7時を回ったいま、広い校庭には生徒の姿は見えない。彼は鉄の柵で

閉ざされた校門の脇の通用門から中に入り、そのまま煌々と明りが灯された警備員の

詰め所へ歩みよる。事情を聞いた常駐の警備員は呆れた様に微笑みながら、彼に生徒

会室の鍵を渡してくれた。

「たいへんだったね。用事が済んだら、鍵を持ってきてね」

同情する年輩の警備員にペコっと頭を下げた若者は、がっくりと肩を落としたまま本

校舎の3階の生徒会室に向かい階段を昇る。

 

(まいったなぁ… 教科書とノートを持って帰って、それから夕御飯を食べてシャワ

 ーを浴びて… 寝るまでに1時間と少しだよなぁ。その間に、あの問題を解かない

 と、今週の土曜日の午後と日曜日を全部つぶしても間に合うかどうか分からないレ

 ポート作成を命令されちゃうもん)

せっかくの休日を自室の机に齧り付き虚しく潰すのは嫌だから、こうして洋一は人気

の途絶えた校舎の暗い階段を昇って行く。

(それにしても、夜の学校って、なんでこんなに薄気味悪いんだ? )

昼間は生徒達の声がやかましく、しかも悪ふざけをしたり、遠くの友に声を張り上げ

て返答したりと、校舎の中は喧噪に塗れている。だが、夜の帳が降りると、このコン

クリートの箱型の建物は、その趣を一変させる。無用な電燈は全部消されて、常夜灯

の仄かな灯りだけが頼りだが、物音一つしない薄暗い階段は無気味で、あらためて洋

一は自分の迂闊さを呪った。

 

(そう言えば、学校の七不思議のひとつに、だれも居ない音楽室のピアノがいきなり

 葬送行進曲を弾き出すって言うのが、あったよねぇ… )

今にも耳に、ピアノの音色が飛び込んでくるのでは無いかと怯えた洋一は、学校に巣

食う魔物に気付かれぬように足音を忍ばせる。3階に辿り着いた若者は、なるべく物

音を立てぬように気を付けながら、静かに生徒会室の前までやってきた。

(えっ? なんだ? 今の、なに? )

そっと施錠を解き、ゆっくりと引き戸を開けた洋一の耳に、かすかではあるが、呪わ

れた妖怪の呻く声が聞こえてきたのだ。扉を開けたまま棒立ちに成った洋一の耳に、

こんどは冥界からはぐれた童女の啜り泣く声が聞こえてくる。

(まじ? ねえ、まじ? これって、太平洋戦争の時の空襲で死んだ子供の彷徨える

 霊魂? それとも失恋を悲観して3年2組の教室で首を吊った貞子の鳴き声? )

ビビリ捲った洋一は、なにもかも放り出し回れ右してダッシュしたい衝動に駆られた

が、それでは宿題が出来ない事に気付き途方にくれた。

 

(このまま、こうやっていても、事態は何ら好転しない。よし、幽霊なんていない、

 いないぞ、いないんだ、たぶん、いない、いないかも知れない、いないでよぉぉ… )

覚悟を決めた若者は、意を決して生徒会室に踏み込み室内灯のスイッチを押し込む。

パッと点った蛍光灯の明かりが彼を安心させた。洋一の願い通り、生徒会室の中には

妖怪も幽霊も悪魔もミュータントも居なかった。

「ふぅ… 」

小さく溜息を漏らしてから微笑んだ洋一は、迂闊な忘れ物を回収する為に、自分が座

っていた席に向かう。しかし、彼が安心するのは些か早すぎた。

「くぅぅぅぅ… 」

誰もいないハズの夜の生徒会室に、間違い無く人の苦悶の声が響いたことで洋一はそ

の場に立ち止まる。彼の目は、声のしたドアを睨んでいた。それは隣室の生徒会準備

室に通じる扉なのだ。生徒会関連の備品や、過去の生徒会の議事録などが収納されて

いる小部屋は生徒会の書記の洋一にとって馴染みが深い場所なので、そこから亡霊か

悪魔の啜り泣く声が聞こえたことに若者は衝撃を受けていた。

 

(でも、なんで、生徒会準備室なんだ? )

学校の7不思議には音楽室や特定の教室、廊下の突き当たり、本校舎の屋上、プール

、体育館の観覧席、そして校長室が現場として言い伝えられているが、生徒会準備室

に関する怪談は、これまで洋一は聞いた事が無い。

(でも、絶対に何か聞こえたよなぁ… )

このまま教科書とノートを回収して立ち去るのが無難なことは分かっているが、恐い

モノ見たさの好奇心が彼を準備室の扉に吸い寄せた。そっとドアノブを握った若者は

、極力物音を立てぬように気を配りながらノブを回して扉を開く。僅かに開けた隙間

から中を覗いた洋一の目に、三つ編みを左右に振り分けた女生徒の後ろ姿が飛び込ん

できた。この準備室には窓も無いので、夜の学校で煌々と明かりを灯していても、外

からはわからない。

(えっと、あの後ろ姿は… 江波会長だよねぇ… でも、なにやっているんだ? )

最初は、この閉ざされた部屋で生徒会長の江波芳美が何をしているのか? 鈍い洋一

にはわからなかった。彼に背中を向けた芳美は爪先立ちになり、もぞもぞと机の角に

股間を押し付けている。背中で揺れる二筋の三つ編みが、彼女の奇妙な動きに合わせ

て揺れていた。

 

 

 

 

 


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