「さあ、行きましょう」 「えっ、行くって、あの、何処に? 」 彼の問いかけの答える事なく、芳美は後輩の手を引き歩き始めた。やがて二人は学校 に隣接した自然公園の南口に辿り着く。一応、夜間は閉鎖されている自然公園だが、 隣の高校に通う若者達は、部活動やイベントなどで頻繁に公園を使用するので、いく らでも抜け道を弁えている。夜の公園に首尾良く忍び込んだ二人は、芳美の先導で玉 砂利の小道を歩き続けた。我慢し切れなくなった洋一が、目的地を問い質そうと口を 開きかけた時に、二人は公園の管理施設のひとつに辿り着く。 「えっと、ここは? 」 「自然公園の西側管理倉庫よ」 ドアには頑丈そうな南京錠が掛けられているが、彼女はポケットから取り出した鍵を 使って、あっさりと施錠を解いて見せた。 「さあ、入ってちょうだい、塩沢くん」 背中を押されて施設に入った洋一の鼻に、閉め切られていた室内の饐えた臭いが感じ られた。部屋の手前には公園を清掃したり、整備する為に使われる各種道具が雑然と 並べられていて、その奥には小さなシンクやカセットコンロがあり、お茶程度なら用 意出来るコーナーに成っていた。遅れて部屋に入った彼女は蛍光灯のスイッチを入れ て、窓の隠すカーテンをひとつひとつチェックした。
「あの、ここって、なんなのですか? 」 「公園の清掃を担当する作業員のひと達の休憩所兼倉庫みたいね。毎週、水曜日の昼 間に使われているの。以前、公園を借りたバザーを企画した時に、ここの存在を知 ったのよ。その時に、何かに使えるんじゃないかと思って、こっそり合鍵を作って おいて正解だったわ」 そこまで話すと彼女は携帯電話を取り出してボタンをプッシュした。形の良い唇に人 差し指を押し当てて、彼に沈黙を要求した芳美が連絡を入れた先は、どうやら彼女の 家の様だ。 「あっ、お母さま? 芳美です、ごめんなさい、生徒会の会議が長引いてしまって、 夕食までに帰れないと思うの。えっ、遅くなるなら迎えに? いいえ、大丈夫です 、はい、はい… 大丈夫よ。もっと遅くなるようなら、男子に家まで送ってもらい ます。はい… わかりました、また連絡します。じゃあ… 」 携帯を切った芳美は、ぺろっと舌を出して親を騙した事を照れた。 「それにしても、とんでも無いところを見られてしまったわね」 「ごっ… 御免なさい、誰にも言いません。本当です、絶対に誰にも言いません」 再び話題があの生徒会準備室での事に触れたから、洋一は額に汗を滲ませて弁明に努 める。そんな若者を銀縁眼鏡の奥から芳美の鋭い視線が貫いた。
「信用できない」 「そんな… 絶対に誰にも話しません。今日、家に帰ったら、全部わすれます」 彼女に嫌われたく無い一心で、洋一は懸命に言い募る。 「だめ、やっぱり君を信じられない、だから… 」 つかつかと若者に歩み寄った芳美は彼の前に跪き、両手を彼の股間に差し伸べた。 「うわぁ、会長、何をするつもりですか? 」 「その、会長って言うのは、もう止めて欲しいなぁ、私には江波芳美って言う名前が あるんだから」 上目使いで睨まれた洋一が固まる間に、彼女は若者のズボンのベルトを手早く外す。 「あの、芳美先輩、その… 」 「まあ、会長よりはマシかな? 何をしているか? ですって? 見ればわかるでし ょ?あなたのズボンを脱がせているの」 行動は分かるが、その意味がまだ分からない洋一が、あたふたしている間に、彼女は 目の前のチャックも開き、そして勢いを付けて若者のズボンとトランクスを膝までず り下げた。 「うわぁぁ、会長! なにをするんです。止めて下さい恥ずかしい」 洋一の驚きと抵抗を、彼女は厳しい目で制した。 「会長じゃ無いでしょ! 」 「いや、あの、芳美先輩、カンベンして下さい」 慌てて股間を両手で隠した若者に、芳美は不愉快そうな顔を向ける。
「なんで隠すの? 貴女は私の恥ずかしいオナニー姿を見たのに、あなたは見せては くれないの? 」 「見たって、そんな、あれは事故みたいなもので、見ようと思って見たわけじゃあり ませんよ」 この場を離れて身支度を整えたい洋一だが、膝までずり下げられたズボンの片方を芳 美に捕まえられているから、逃げようにも逃げられない。 「私は君のことを良くは知らないから、やっぱり君を無条件で信用することは出来な いの。このことが露見したら、私はもう生徒会長を辞めるどころか、学校にも出て 来られなくなるわ」 じたばたともがく洋一を見つめて、芳美は言葉を続ける。 「だから、君に黙っていてもらう為に、君と二人で共通の秘密を持つことにしたのよ 。わかったら、そのチンチンを隠している手をどけなさい」 「秘密って… うわぁぁ」 彼女は、まだ状況が呑み込めぬ若者の手を振払い、彼の股間を露にした。
「ほら、そんなに騒がない! 夜は立ち入り禁止の公園だけれど、私達みたいに抜け 道を通ってカップルが忍び込んでくることも少なくないんだよ」 「あっ、すみません、でも、会長… 」 「芳美よ、芳美! 」 「はい、あの、芳美さん、もう良いでしょう? ズボンを履かせて下さい」 こんな状況にありながら、まだ彼女に対する邪心を抱かぬ若者に対して、芳美は驚き 呆れるが、同時に日頃から憎からず思っていた可愛い年下の男の子の純真さが嬉しく て、思わず微笑んでしまう。そして、彼女が常日頃持て余す欲情が、ここぞとばかり に芳美の心の中で暴れ始めた。 「だめ、こんなの見せておいて、それでいてお預けなんて、そんなの殺生よ」 股間を隠そうともがく若者の手を邪険に払い除けた美女は、彼の一物に指を絡めると 、少々乱暴に擦り始めた。 「あっ、先輩、そんな、くぅぅ… 」 深夜の自室で行なうマスターベーションでは無く、憧れの先輩の細い指で男根をしご かれた洋一は混乱するが、もう彼にも抵抗の意志は消えていた。
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